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私の転職

 2016年1月某日。朝5時。
暖かい毛布にくるまりながらふと思う。「応募しなかった後悔はしたくないな」

 今日中に速達で出せば間に合う。

 急いで化粧をし、ジャケットを羽織って近所の証明写真ボックスに入る。寝起きと寒さのせいで血色が悪い顔写真になってしまうが仕方がない。ボックスの外は前日からの雪が積もり始めていた。

 同業他社の最後の新規採用募集。今の職場と規模が全く異なるが、新卒から3年間の経験や実力を試してみたいと思った。残業代がでない役職にさせられ、薄給すぎて奨学金も返済できない状況をどうにかしなければいけないと思った。貧困OLの記事が自分に当てはまることばかりで悲しかった。色々な思いがこみ上げて書き上げた応募書類はあっさり書類通過した。

 書類を出す前から退職の意向を伝えていたため、残留を懇願する上司。「退職を決めたならば、ブレずに退職しなさい」という親。「これからも一緒に仕事をしたい」と言ってくれる仕事仲間。ありがたいことではあるが、各々の思いを言われ、どうしていいかわからなくなっていた。疲れてしまった私は周りに「転職は一旦白紙にする」とだけ言った。

 しかし、しれっと時間休を使い、誰にも言わずに二次面接へ行った。外野が何を言おうと、自分が後悔したくない。実力試しじゃい!と開き直った。メンタル弱いと思っていたが図太いな、あたし。
 そうはいっても面接当日になると落ち着かなくなり、面接会場の最寄り駅のケンタッキーへ駆け込んでひとり小さな声で面接の練習をする。「長所と短所」「仕事を通して培ったこと」「この職場に入ったら何がしたいか」…。ツイスターを食べながら(こんなときでもしっかり食欲はある図太いタイプ)外をみながらぶつぶつ言っていた。

 1年後、私は転職先の同僚たちと弾丸旅行を組み、USJにいた。「ホスピタリティを学ぶ研修」とか言いながら、同僚全員で被り物をしてはしゃいでいた。奨学金も自分で返済しているし、「みんなで息抜きしてこい」と送り出してくれる上司もいる。仕事は大変だが、挑戦しがいのあることばかりで楽しかった。

 そして今年。2回目の同業他社への転職をした。今までの経験を評価してもらい、採用が決まった。奨学金もあと少しで払い終わる。あのときの挑戦が今の私を作ってくれたといつも感じる。雪の降る日の決断は間違っていなかった。挑戦してよかった。

 最後に。
採用通知がきた時の手帳の日記がでてきた。人に見せる体で書いてないので日本語が色々おかしいのだが、なにかにかこつけてケンタッキーばっかたべてんな、あたし。


合格してた(笑)って。嬉しいくせに

#挑戦してよかった

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