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 セミのいのち

今日は夕方から2時間ほど歩いてみた。
街なかの、ビルの間を自由にのんびり。
「あのお店に行こうか」と、なんとなく決めて。

日の入り後のまだ薄明るい時間帯
目的地に向かって歩道を歩いていると
足元に茶色の物体が…。

ん?昆虫の死体かな?
と思った瞬間
仰向けに転がっていたそれは
足をバタつかせ始め
まだ中身が入っている(?)セミだと分かった。

何年も土中で過ごして
地上へ出てきたセミの幼虫を
危うく踏みつぶすところだった。

一度木に登って落ちてきたのか
本当に迷っているのか不明だが
都会や田舎は関係なく
結構地面をうろついているセミは多い。

自分にとって毎年恒例に近い
迷子のセミの幼虫を
近くの樹木に移動させる支援活動開始。

指でつまんで近くの街路樹に持って行き
這い登れるように樹皮をつかんでもらう。
状況が把握できずに固まる子もいれば
素直にジタバタと動いて抵抗する子もいる。
(セミにも性格が笑)
幹にくっつけばあとは自動運転だから
ゆっくりと樹を登っていく姿を見守るだけ。

羽化しても
数週間後には命が終わるセミさん。
うるさいな!と思われたり
網で追っかけられたりするセミさん。

その健気な姿を眺めて
ちょっとだけ生命の神秘を考える。

土の中、どうだった?
何年もどうやって生きてたの?
セミはなぜ存在してるの?
大いに鳴いて 生きて
夏を謳歌してね。

そして勝手に
「いいことしたかも」と
自己満足に浸る。

ただ、歩道周辺をよく確認してみると
まだ仲間がたくさんいて驚いた。
おまえもか!などと言いつつ
歩道をただ右往左往している
合計5匹救助した。

歩道上で力尽きている子もいたが
一度に助けたセミ5匹!
自己最高救助記録更新!

あなたたち
もうちょっとうまく出てこないとね!

練習なしの一発本番だし
初めての地上だし
それは仕方ないか…。

などと思いつつ
観察している時間はいい気分だった。

帰りにも同じ場所を通ってみたが
別のセミたちが二匹ほど
ちょううど羽化の真っ最中だった。

まだ柔らかそうな
浅葱(あさぎ)色の 白色の 
伸びきっていない
へなへなの羽を広げながら
ゆっくりと殻を脱ぎ捨てる。

その自然で不思議な光景。

近くでなぜかエレキギターを抱えた若者たちが
「オレ、初めて見た!」と感動して騒いでいて
若者の一人は、私と同じように
歩道に落ちている幼虫を木の幹に移動させ
スマホで写真を撮ったりしていた。

もう一人はセミを応援しているのか
その興奮を音で表現せずにいられないのか
単なるクセなのか分からないが
ギターを軽く弾きながら
セミの羽化を眺めていた。

通りがかった私にも
「セミが脱皮してるんですよ!」と
興奮しながら教えてくれて、
ウソ偽りないその声と優しさが
ほほ笑ましいこと限りなく
「ホントだ、こんなところで!」
とニコニコしながらうまく合わせて応えた。

(田舎育ちなもので、珍しくもなんともないんだよね)
(でも何度見ても、おもしろいものではある)

内心ではそんなことを思いつつ
子どものように新鮮な反応をしている
若者たちがかわいらしくて
さらに気分が良くなり

(セミよ、若者よ、ありがとう)

などという平和な気持ちで帰宅。

生まれてきただけで
人間をしあわせな気分にするセミは
スタートのサイン・幸運のシンボルでもある。


あなただって
生まれて息をしているだけで
誰かをしあわせにしている
価値ある存在です。


断言できる。

急に話が転換したけど
ほんとにそうだよ。

ぐうたらでも
懸命でもいい。

ともに死ぬまで自分を生きようね!

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