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議論の余地しかない/森博嗣

S&M、Vシリーズなど、これまでの作品から抜き取った珠玉の言葉たち。
引用元のタイトルを見ただけでしびれる。
そんな人向けのフォトエッセィ。

「正解とは、真実とは、本人が最も納得できる仮説にほかならないのです」

地球儀のスライス

動機なんてさして重要ではない、と発言したのは犀川先生だっただろうか。
被害者が、世間が、納得するためだけに必要なのだと。
ミステリィばかり読んでいた当時の私は少なからずショックを受けた。
納得できる理由があれば、安心するのか?

「世の中に存在する問題の大半は、問題自体がどこにあるか、何が問題なのか、ということが明確に提示されない。それが最大の問題なんだ」

今夜はパラシュート博物館へ

「問題を把握できたときには、問題の大半は解決している。また、問題を解決したときには、新たな問題が既に始まっている」

問題が問題
議論の余地しかない

多様性に対応したトイレ問題を思い浮かべる。
何が問題かわかっていないから、やることなすこと炎上する。
当時はこれほどリアルに落とし込めていなかったが、令和になって「ほんとソレ」となるの感服致す。

なににつけても、反対か賛成か、好きか嫌いか、を決めようとする。どうして決める必要があるのか。反対のときも賛成のときもある。好きなところも嫌いなところもある。ありのままに受け止めることが何故できないのか。つまりは煩わしいから、決めてしまいたいのである。

凡人と天才
議論の余地しかない

煩わしいから、つまりは、面倒くさいから。
どちらかに重心を傾けたほうが、考えるのが簡単になる。
最近気をつけているのは、考えるのをあきらめないこと。

美しい形とは、つけ加えて作ったものではない。削って残ったものである。

美と形
議論の余地しかない

シンプル、断捨離、機能美、などというワードに惹かれる性分。
削ぎ落とした美しさには品がある。
本作から今響く文章を"一つだけ"引用しようと、厳選に厳選を重ねたはずなのに、まぁこの通りである。

議論の余地しかない。

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