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デジタルと人が自然に馴染む。「らしさ」を感じるものづくり

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論の授業の第6回(5月17日)レポートをまとめました。

今回は、チームラボ(teamLab)取締役の堺大輔さんにご講演いただきました。

プロフィール

取締役 堺大輔氏
1978年、札幌市出身。東京大学工学部機械情報工学科、東京大学大学院学際情報学府修了。大学では、ヒューマノイドロボットのウェアラブル遠隔操作システムついて研究。主に、ソリューションを担当。

teamLabが手掛ける2つの領域

①デジタルアート

teamLab Borderless:Body Immersive(=身体ごと没入する)の体験

teamLab Planets:より体感型の作品、体ごと入っていくもの。足の裏の触覚や香り等の五感を刺激する展示を行う。

teamLabのデジタルアートでは、光を使ったアートが中心となっており中国・マカオ・上海など海外での公開も行っています。

デジタルアートの代表的なテーマ

Relationship Among People

花と滝 -人々のために岩に憑依する滝-
子供が走るとより美しい風景が作られるように、他者の存在がより作品を良くするもの。

レストラン✕デジタルアート
お皿を置くとお皿にアートが投影され、お皿にお花が咲いたりします。

Co Creation(共創)

お絵かき水族館
お絵かきしたものが投影され、水族館の中で泳ぎます。

②デジタルソリューション

teamLabでは様々な企業のサイト・アプリのプロデュースも行っています。

グッドデザイン賞を受賞したりそな銀行のインターネットバンキングのアプリもteamLabが手掛けたものです。システムとデザインを一緒に考える事を重要視して制作したとの事でした。

アイデアが生まれやすいオフィス空間

teamLabでは、できるだけアイデアが生まれやすい仕掛けをしています。

書けるデスク
ホワイトボードではなく、付箋のような大きな紙が乗っていて、書きながら考えられるようになっている「メモデスク」があります。

描かないデスク
このデスクいっぱいに積み木のような模型が積み上げられています。この模型を手で触りながら、実際にものを描かなくてもノートにぐるぐる絵を描きながら考えているような感覚でミーティングができるデスクです。

仕切りのない空間
会社にいることで「一緒に作れる」空間を目指し、仕切りのないオフィスが設計されています。

制作進行に関する質疑応答

Q.エンジニアのマインドセットの醸成について
エンジニアがリスペクトされる風土があり、エンジニアも一緒にリスクを取って作っています。銀行のアプリにおいても開発の初期段階から巻き込んで作った事によってエンジニアがプロジェクトをリードしていかれました。

Q.teamLabの開発手法について
最初の段階からできる限り形にしていき、見える形にしています。アートに関しては特に作って実験して、を繰り返しながら作っています。また、全くのゼロから作るのではなく、今までためたナレッジを活かしてアップデートしながら作っています。

Q.teamLabにおける「品質」の定義と品質向上のポイント
ユーザーの使い勝手や使い心地が「品質」として定義されており、ユーザーにとってどれくらい気持ちよいものになっているかを重視しています。ただし数値化していないので図り方が難しいとの事でした。

Q.teamLabのアート領域の知見
何かしら共通のメソッドがあるかと言うと無いそうですが、「品質」の考え方については唯一全社で共通しているものであり文化であると考えていらっしゃいます。

感じたこと

デジタルアートとデジタルソリューションのいずれにおいても、デジタルと人が自然に馴染むような作品や提案だと感じました。そしてそれらを支えているのは作り手の方々の制作環境やマインドセットであり、アウトプットとの関連性を感じました。

「デジタルと人が自然に馴染む作品や提案」がteamLabらしく真似できないものである事を支えるのは、それを生み出す環境に独自性がある事ではないでしょうか。
アイデアが生まれやすいオフィス空間作り、エンジニアリングへのリスペクト、ユーザーの使い勝手や使い心地を「品質」として定義する等の仕組みが「デジタルと人が馴染む」teamLabらしいもの作りを支えていると感じます。


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