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七夕の夜 前編

七月七日。七夕の日。

彼女が前に住んでいた、飯田橋の近くにある東京大神宮で七夕祈願祭があるということで、祭好きの彼女と一緒に行ってきた。
神社に着くと、何やら(主に)女性たちの行列が出来ている。どうやらここは縁結びの神様がいるらしく、納得。

どうやら行列は、神職と巫女さんに、祈念しながら短冊を結んでもらうために並んでいるらしい。そして、自分で書いて自分で結ぶなら並ばなくてもいいということで、僕らはそうすることにした。

何を書こうか。

この時、僕はまだ彼女が僕のことをどう思っているのか知らなかったから、短冊に彼女のことを書くのも何か変かなと思い、「せかいのみなさんが、へいわに」みたいな当たり障りのないことを書いた。

「なんて書いたの?」とそれとなく聞いてみる。

「ヒミツ」と彼女。

さてこの後どうしようかと思っていたら、彼女の住む入谷で朝顔祭があるから行こうとなった。

飯田橋からメトロを乗り継いで入谷へ。
閉鎖された大通りは、人がごった返している。
お腹が空いていたので、屋台を物色。お好み焼きと梅酒を手に、適当に道端に座る。
これがマツリ・スタイルだなんて言ってみたりした。

周りは浴衣姿の中高生たち。
(そういえば僕の初めてのキスは夏祭りだったけ)
そんなことが頭をふとよぎったがすぐに忘れた。

「ソロソロ カエルネ」

ということでお開きにすることに。
帰るといってもここは彼女の家がある町。家まで送ることにした。

家の前。

「キョウハ、アリガトウ」と言う彼女が顔を近づけてくる。

「え?」と一瞬思うも、フランス式の挨拶(ビズ:お互いの頬をつけるキス)だったようだ。知ってはいたが、実際にしてみるのは初めてだった。

不意に彼女の肩を抱き、今度はビズではないキスをする。

二人してしばらく夜風に当たることにした。

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