海外事例紹介#003 ヴェルサイユ・バロック音楽センター
私事になるが、私が現在住んでいるのは、とある南フランスの町。ということで、今日はそのフランスの事例を一つ。
概要
ヴェルサイユ・バロック音楽センター(Le Centre de musique baroque de Versailles 以下CMBV)は、フランスのヴェルサイユにある、17〜18世紀に隆盛したバロック音楽の研究と演奏を行う施設。より現代的で、多様なメディア展開ができるように、2018年リブランディングを行った。
デザイナー:graphéine(フランス、パリ)
リンク:graphéine プロジェクトページ
ロゴ
カラーシステム
タイポグラフィ
グラフィックツール
意見
音楽に合わせて動的に変化する「ダイナミック・アイデンティティ」となっている。このダイナミック・アイデンティは一時期ブームであり、アートやテクノロジー分野を中心にこぞって採用していた。しかし時に「無理矢理感」があったのも事実だ。しかし、本プロジェクトでは自然で効果的なものとなっている。なぜか。
それは、ロゴの礎となっているのが、ヴェルサイユ宮殿を建てた当時のフランス王ルイ14世の異名「太陽王」を連想させる陽光と、音楽の波長を組み合わせたものであり、どちらも本施設に欠かせない要素(≒アイデンティ)だからである。
ビジュアル・アイデンティ・デザイン(≒ブランディング、リブランディング、etc)は、時に見かけを良くする“スタイリング”のようなものと誤解されがちだが、その対象が保持している、その対象を成すのに欠かせない要素を可視化することがその本質であるということを、本プロジェクトは改めて教えてくれる。先程の「無理矢理感があるダイナミック・アイデンティ」というのは、言うなればダイナミック・アイデンティという“スタイル”だけを用いていた例だ。
タイポグラフィも同様に、バロック時代のそれを参考としたフォントをポスター等の見出し部分に用いながら、本プロジェクトの主旨である「現代に通用するメディア展開」ができるよう、現代的なタイポグラフィをロゴ及び本文に用いて、音楽のリズムのようなコントラストを実現している。
本プロジェクトの主旨である、「多様なメディア展開の実現」は、グラフィックツールへの使用例から見てもわかる通り、一貫した効果を成している。
まとめ
クライアントの持つアイデンティの可視化の鮮やかさと、効果的な手法選択(ダイナミック・アイデンティ)が印象となる良作。今後はウェブサイト以外でもこの動くロゴがどう展開されていくか楽しみだ。
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