七夕の夜 後編
キスを交わした僕たちは、少し歩いて、大通りにかかる歩道橋の上に落ち着いた(トレンディドラマか)。
「カノジョ イマスカ?」
この時、僕はこの質問が普通に言葉通りのものだと思って、
「いないよ」と答えた。そしたら、
「ワタシハ カノジョジャナイデスカ?」と言ってきた。
しょっちゅう一緒に出かけるし、キスもしたんだからそうだろう、と。
言われてみればたしかに。
でも、いわゆる「告白」というステップに慣れた日本人としては、すっかり“カノジョ”という認識を持っていなかったのだ。
しばし歩道橋の上で話す。
正直、何を話したかはよく覚えてない。
下を通り過ぎるトラックの数を数えたりしてた。
そして今度こそ彼女は帰路についた。
後ろ姿を見送る僕は、少し寂しいような、でもなにかに安堵したような変な気持ちだった。
こうして彼女は“カノジョ”になった。
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