<第16回> コーチング例 ③「アゲイン!」でラストがナイスプレーって本当に良いの?
ラグビーでコーチをやってみたいという気持ちになり、いざ準備期間に入ると、熱意もやる気も満々。多くのコーチが経験する気持ちだと思います。
そんなコーチとしての日々の初期、私は選手時代を振り返り、選手から見たコーチングについて「あんな部分を改善したい!」「こんなやり方ではダメだ!」と気合が入っていました。
ところが、コーチをはじめてから数ヶ月が経過すると、選手時代の???はどこへやら、すっかりコーチからの目線が中心になっていることに気づきました。
前の記事にもあるような「これって意味ないよな、、、」「これってコーチサイドの工夫がないよな、、、」そんな生意気感覚がどんどん鈍くなっていくことを感じました。
そんな自分に危機感を感じる中で、大きな気づきがあった経験を記したいと思います。
OB同士で久しぶりに集まると、「あの練習って何の意味があったのかなあ?」「いやいや、当時は意味のない練習だと思っていたけど、あの練習メニューにはチームビルディングの要素が間違いなくあったよ」、こんな話題になることがあります。
ラグビー独特のカルチャー(しかも私の時代だけかも???)に練習メニューの最後の1本における【アゲイン!】があります。(ありました。、、、私の時代までですかね?)
私が選手として所属してきたラグビーチームの練習では、各練習メニューの最後のプレーで失敗すると「アゲイン!」とコーチに言われて、成功するまでひたすら繰り返すというカルチャーがありました。
「終わりよければすべて良し」 何度もアゲイン!を繰り返すなかで、やっとの成功で練習メニュー終了! まさに最後は選手もコーチも多くの達成感を持ち、気持ちよく練習を終えることが出来ました。
そんな「アゲイン!」の記憶が薄らぐ中で、コーチ駆け出し時代に、ある指導者からの言葉に「はっ」とさせられる出来事がありました。
その指導者は非常に粘り強く、徹底した指導ができる指導者の方ですべての練習メニューで「アゲイン!」を連発される方でした。
ときに難しい練習メニューの時は「アゲイン!」だけで1時間が過ぎてしまうことも、、、
その方がある試合後にこんな言葉を漏らしました。
「うちのチームはスロースタートだよなあ、、、 試合開始直後は本当に動きが悪いんだよ、、、」
この言葉を聞いたときに「それって終わりよければすべてよしのアゲイン練習ばかりやっているからですよ! 選手もそんな日々に慣れてきて、最後の方だけ本気出す=最初は力をセーブするからですよ! その癖がつきまくっていますよ!」
と無言でつっこんでいる自分に気づきました。
体力や集中力を考えれば、本来は練習の最初の方がパフォーマンスは良いはず。その良い状態を出来る限り落とさないようにしつつ、試合終盤に、さらに力を振り絞ることができるような練習メニューをプログラムするべきなはずです。
しかし、実際には「アゲイン!」で終わりよければすべてよし。 これではスロースタートになるもの当たり前、、、。
この気づきが練習時間の極端に短い環境にいた私にとっては最高の勇気を与えてくれるきっかけにもなりました。
そこからは良い意味で開き直ることができ、1つの練習メニューで1本しかやらないということもありました。
選手は「1本しかやらないって、、、それって練習メニューと言えるんですか?」と言葉に出さずとも、そんな思いが顔に書いているかのようでした。
そんな選手たちに
「だって、試合でこのシチュエーションが起こるのは1回あるかないかだよね。 それなのに1日に何回もやるより、全員が物凄い集中力で1日1回を何回もやったほうが良くない?」と事前に説明しました。
「まあ、確かにそうだけど、、、」と選手も無理やり?納得させることが出来ました。
事実、その話の後の【1メニュー1本のみ練習】は、ものすごい緊張感ある練習になりました。
本当のテクニックやスキルを習得する場合には同様の動きを1万回こなせばならない、などといった研究結果があることも知った上での私の戯言ですが、スロースタートなのを「ウォーミングアップの内容」や「試合前の練習で声が出ていなかった!」などの精神面を原因にするだけでは、Z世代の本気の力は引き出せないのでは?と思います。
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