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組織・人事プロジェクトにおける発案者のエゴ

最近、組織変革や人材教育研修の案件相談を受けることが増えてきた。多くの企業が事業変革や事業創造といった新しい活動に取り組もうとする中で、ツールやナレッジの活用だけでは取り組みが進まず、人や組織へと目が向いてきたのだと思う。ある種のトレンド的なところもあるが、組織や人材への取り組みは間違いなくホットなテーマとなっている。

発案者の思い込み

コンサルタントにとって、この手の案件を受ける際に難しいことはいろいろあるのだけれど、多くのケースで共通して発生するのが、発案者・発注者とどう向き合うかという問題である。われわれコンサルタントへ相談が来るとき、そこには必ず発案者・発注者がいる。そして案件の前提となる現状理解には彼らのフレーム(認識や思考の枠組み)が深く関わっている。つまり、組織や人材のどんな状態を理想と考え、何を課題と捉えるか、には発案者のバイアスが入り込んでいる可能性が高いのである。

もちろん中にはニュートラルな価値観をお持ちのスマートな発案者もいるが、それでも少なからず彼ら自身のフレームが前提となっている。それどころか外部コンサルタントに自分の考えを代弁させようとするパワハラ的な発案者・発注者も少なくない。組織・人事系プロジェクトを受けるコンサルタントにとって、こういった「発案者のエゴ」は最も大きな課題なのである。

コンサルタント側から見ると発案者・発注者=顧客であり、彼らの要求に応えることが顧客満足度を高めることにつながる。一方で本質を捉えていない発案者の要求に応えようとすると結果的にビジネス成果につながらないといったことにもなり兼ねない。どちらを取るかという単純な問題ではなく、このジレンマを擦り合わせていくことに大きなエネルギーを費やすことになる。

客観的な診断が一番

「発案者のエゴ」問題の解決のためにいろんなアプローチはあるが、結局のところ『診断』が一番だと思っている。現状の組織について多面的に情報収集し、丁寧に分析して本質的な課題を導き出す。そしてその課題を発案者ともきちんと共有する。時間をかけてでもこの手順を踏むことがベストである。診断は多くのコストがかかり、それをクライアントに相談することで失注するリスクもあって、コンサルタントにとっては怖いアプローチでもある。実際、「発案者のエゴ」問題を曖昧にしたままとりあえず進めることもできるし、そうしてしまいたくなるが、長い目で見たときにはお互いデメリットしかない。

すぐに解決策や手段へ飛びつこうとする発案者に対して「発案者のエゴの問題というのが起こりがちで…」という話題を案件初期に正直に話せる勇気こそが一番大切なのである。


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