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【66】環境が変わる時代の心構え『メンタルの強化書』佐藤優

環境が変わるとき人間はストレスを感じます

人間の本能として、今までに経験したことのない身の危険に遭遇するリスクが高まるため、身を守るために興奮状態が続きやすく精神的に疲弊しやすいということだと思います

以前ストレスの強さを指標化した本を読んだ際に、配偶者の死別がストレスのトップで、親族などの死別などが続き、割と上位に海外転勤・転職があがっていました

派手に出歩くことは自重しているため、身の危険を感じることはありませんが、仕事だけでなく生活でも初めてのことが多いというのはたしかにストレスになっています

鈴木宗男事件に連座して東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、東京都内所の独房に512日間拘留された経験を持つ元外務省官僚の作家佐藤優さんによるメンタルの強化書

序盤で、現代社会において理解できないものを排除しようとする動きがあると指摘しています

(理解できないものを)受け入れるには受け入れる方の余裕が必要です。その余裕が社会全体になくなっています。社会が不安定になるほど、不安感や恐怖心は強くなります。先が見えにくく、閉塞感が漂ういまの社会は、他者を受け入れる余裕がなくなっているのです。

アメリカの大統領選挙やイギリスのEU離脱など政治的な対立だけでなく、自分が理解できるもの、理解したいものだけに囲まれて生きたいと考えている人が多いように感じます

個人としてどのような考え方を目指すべきかについては、「柔らかな心」をあげています

いまのような変化が激しくプレッシャーやストレスの多い時代は、硬い心よりも、しなやかで柔らかな心の方がはるかに強いのです。どんな環境でもどんな力が働いても、柔らかく曲がり、しなやかにまたもとに戻る。そんな心こそ目指すべきだと思います。

これは環境が変わったからこそ、その重要性を実感しています。新しいことに取組むときに、過去の成功を引きずって動き出せないケースが見受けられますが、柔らかい心はこのような場面でも有効だと思います

「教養を身につけなければこれからの時代は生きていけない」というような脅迫的ニュアンスで語られることが多いように感じます

たしかに本屋でも教養をテーマにした本は多く見かけますが、上で触れたように心に余裕があるときに教養は育まれると指摘しています。たしかに知識人を囲う余裕があった時代に、文化レベルがあがったこととも符合します

非正規雇用と正規雇用の賃金格差の撤廃も、実質は正規雇用の賃金が非正規雇用の賃金に近づくということになるかもしれません。そうなると、一部の高額サラリーをもらう超エリート層と、最低賃金より少し上位の大多数の一般的社員に二極化する。つまり正規雇用社員の仕分けと二極化が進むということになります

これまで働き方改革や同一賃金同一労働の議論のなかで、このような視点で考えたことはありませんでした。たしかに、機械・AIによる単純労働の代替、新しい産業への置換えのなかで、企業がこれまでどおりの雇用体系を維持することが不可能なのは明らかです。それであれば、会社と従業員の関係性が変わるなかで、一つの着地点として筆者の指摘は現実的だと感じました

本筋ではありませんが、短期的な視点と長期的な視点を組み合わせて、一見すると目的が明確なようで背景には別のテーマが隠されているという考え方には惹かれるものがあります。だいぶ前に読んだ『ストーリーとしての競争戦略』でも触れていた考え方だと思います

これまで以上に自分の身・メンタルは自分で守ることが求められるようになっています。そのために読書を通じて他者の経験を学び、自己を客観視することが役に立つと思います

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