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【21】多かれ少なかれ仮面をかぶって生きている『一人称単数』村上春樹

好きな小説の英語版を読んでみたことがある。
村上春樹さんの作品は、英語版が多く出版されており簡単に手に入る。

そして、エッセイでも触れられていたと思うが、翻訳を手掛けていたこともあり英訳された小説もかなり読みやすいのが特徴
村上春樹さんっぽさがここまで色濃く残るのかと感動したのを覚えている。

一方で、英訳があまりしっくりこなかったのが、森見登美彦さんの小説
『ペンギンハイウェイ』はまだ良かったが、『夜は短し歩けよ乙女』はこねくり回された文章の良さが半減していた。


その意味で英語を勉強するには村上春樹さんがオススメできる。

村上春樹さんの新作短編集

以下8つのタイトルで構成されている。

石のまくらに
クリーム
チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ
ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles
「ヤクルト・スワローズ詩集」
謝肉祭(Carnaval)
品川猿の告白
一人称単数

『謝肉祭(Carnaval)』が特に印象に残った。

醜い容姿を持つ女性の話で
それを自覚し、逆手にとって愉しんでいる強者である。
そんな彼女と意気投合したのは、シューマンの『謝肉祭』を「無人島に持っていくピアノ音楽」に選んだこと
そんな彼女らは不思議な魅力を持っていたが、同時に仮面に隠された一面もあった。

「~僕らの暮らしている世界のありようは往々にして、見方ひとつでがらりと転換してしまう。光線の受け方ひとつで陰が陽となり、陽が陰となる。生が負となり、負が生となる。」
「私たちは誰しも、多かれ少なかれ仮面をかぶって生きている。まったく仮面をかぶらずにこの熾烈な世の中を生きていくことはとてもできないから。」

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