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【68】極限状態でも貫く自己はあるか『国家の罠』佐藤優

難解な内容をわかりやすい文章にまとめることができるのは、アタマの良い人の特徴だと思います

筆者の佐藤優さんは、外交の最前線である外交官として旧ソ連の日本大使館に勤務し、その後鈴木宗男事件に連座し逮捕され五百十二日間の独居生活を過ごした経験を持ちます

そもそも外交官、特にインテリジェンス(特殊情報活動)という国益に直結する仕事の世界はなかなか理解しにくいものだと思います

それに加えて、東京地方検察庁特別捜査部による国策捜査は、さらに理解しにくい特殊な性質を持っています。しかしながら、筆者がこれに背景を補いながら描写することでとても理解しやすくなっています

筆者の常人離れした記憶力と構成力により、会話まで再現されているため、国策捜査の異質さが恐ろしさと生々しさを伴って伝わってきます

人間は極限の状態に置かれたときにその本性がわかります

少し逸れますが、本書でも旧ソ連において、ウォッカを散々飲み干し酔った時にどう振舞うかでその人が信用できるか、腹を探るようです

国策捜査で逮捕されるという極限状態に置かれたときに、自己を客観視して置かれた状況を分析し、国益を最優先としつつも最善を尽くす姿に感動しました

今では作家として多くの連載を抱える筆者なので、これからもその圧倒的な知力に刺激をもらいたいと思います

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