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第一回生きもの調査

雑草取りに奔走する日々を送っていましたが、気がついたらあっという間に7月になっていました。前回投稿したのも一月近く前に…

稲の様子


悠長に過ごしている間に、夢山水はあっという間に大きくなりました。

これが田植え時(4月30日)。草丈10cmくらい。茎数は2〜3本。

こちらは6月10日の様子(移植後40日目)。草丈35cm、茎数10本。

そして現在(移植後67日目)。目を離した隙に、急にもりっとしてきました。草丈69cm、茎数25本。周りの田んぼより葉の色が濃く、茎もしっかりして、近所の方からよく褒められてます。初めてなので良いかはよくわかりませんが、ビギナーズラックなんだと思われます。

オタマの様子

稲ばかりがもりっと成長してるわけではありません。田んぼを賑わせていたオタマジャクシもこぞってカエルになっております。

今年生まれたカエルは1割アマガエルで、ほとんどはトノサマガエルだったようです。ナゴヤダルマガエルっぽい個体はぱっと見、見当たらないですね。春に交尾してた個体はトノサマガエルだったのでしょうか?

稲も生き物ももりもり育ってきたので、この里山の田んぼの生態系はどうなっているのか、また稲作方法が生き物にどのような影響を与えているのかを調べるべく、生き物調査をしましたので報告します。

生き物調査〜方法〜

調査方法は(独)農業環境技術研究所の「農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル」を参考に行いました
(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/shihyo/)。
調査場所は弊社の田んぼ2枚(育苗時のみ農薬有、有機肥料、生き物配慮)と、比較のために同じ時期に田植えをおこなった同じ里山の慣行栽培田(農薬有、化学肥料)の田んぼ1枚です。
調査は二つの時期に分けて行い、1回目は田んぼの水を一旦抜く「中干し」という作業前にカエル類と水生昆虫の調査、2回目は稲が出穂する前の時期にクモ類とトンボ類の調査になります。今回は1回目の調査について書いていきます。なおマニュアルでは誰でもできるように、生きものの種判別は簡単な分類程度に留めていますが、なるべく判別に努めることにします(現時点の私の能力では細かくはわかりませんでしたが…)。

まず前日までに田んぼの四方の畦10mに目印をつけます(写真は5mおき)。
カエル類の調査は、この10m間の畦〜稲一列目にどのカエルがどれだけがいるかを歩いてカウントしました。畦の幅は場所によって異なりましたが(40〜70cmくらい)でしたが、マニュアルに明記してないので調査面積の差は気にせずに行いました。

水生昆虫は、10mの目印内から1mを5箇所採択し、幅30cmのD型フレーム網で畦側〜稲一列目までの間を表面の泥ごとすくい取り、その中にいる3mm以上の生きものを種類ごとにカウントしました。

調査結果

田んぼ1と2が弊社の田んぼです。まずカエルですが、ダルマ類(トノサマガエル+ナゴヤダルマガエル)とアマガエルの2つに分類しました(ダルマ類は瞬時に判別できないので)。こちらはかなり明確に差が出ました。おそらく田植えひと月以上前から水を張ることで、ダルマ類の交尾の時期にちょうど良い水場として使われた結果と思われます。マニュアルではダルマ類が9匹以上観察されれば環境保全に良い農業とされているんですが、それにしてもこんなに増えるとは…

続いて水生昆虫ですが、種数は田んぼ1と2が10種、慣行栽培田が9種で、確認された生物の合計数も差がありませんでした。まず水生甲虫ですが、マニュアルでは3匹以上が良いとされてます。

採取されたのは、弊社の両方の田んぼでコシマゲンゴロウが一匹ずつと

ヒメゲンゴロウが弊社の片方の田んぼで確認されました。どちらも体長1〜1.5cmほど。どちらの種も一匹だけなので慣行栽培田と差があるとは言えないですね。ただ、この地域には既にゲンゴロウやガムシといった大型の水生甲虫は姿を消しているかもしれません。残念。

水生甲虫類以外はマニュアルでは調査対象外でしたが、生態系把握のために調査を行いました。気になったところだけ書いていきます。
まず田んぼ1のアメンボとヒメアメンボが慣行栽培田に比べて少ないです。体感ですが、弊社の田んぼは最初かなりの数のアメンボがいたと思うので、勝手な想像ですが、増やしすぎたカエルに食べられた事が原因かもしれません。
もうひとつ気になった事はヤゴです。

弊社の田んぼと慣行栽培田を比べると、イトトンボのヤゴは弊社のほうが多いのですが、

こういったトンボのヤゴがほとんどいませんでした。弊社の田んぼにもシオカラトンボや、

コシアキトンボが来てる様子は度々見かけるのですが…原因がカエルによるものかはわかりませんが、今後の課題になりそうです。

まとめとおまけ

今回の生き物調査で分かった事は

1.早く水田に水を入れる場合の有機栽培の方がカエル類の生活空間として貢献する
2.水生生物への貢献度は有機栽培と慣行栽培では差がない
3.慣行栽培の方がトンボ類の生活空間として貢献していた
4.外来種いなかった。さすが山奥

今後の水田生物多様性を高めるために、2と3に関しては色々調べていく必要がありそうです。

あとついでですが、弊社の田んぼのオタマが体感9割ほどは成体になったことと、稲の茎数が十分増えてくれたので、一方の田んぼは2日前に、もう一方は来週に水田内の水を抜く「中干し」と言う作業を行います。

この作業、かなりの生態系の撹乱になってしまうのですが、撹乱の強度を抑えるために弊社ではカエルへの変態を待ってから、そして常に水がある退避溝を用意するといった対策で水田生物には1週間ほど粘ってもらう予定です。いずれは中干ししなくて良い生育管理に切り替えれないかなぁと思っています。

さて、今回のおまけコーナーは生物調査で紹介しなかった子たちです。

マツモムシ。下は脱皮したてと思われる。背泳ぎが得意(むしろそれしかしない)。
英名”backswimmers”

ガガンボの幼虫。きもめ。

コミズムシ。ちょっとマツモムシに似ている。5mmもない。背泳ぎしない。

ゴマフガムシ属の幼虫。

マルタニシ。珍しくないけど絶滅危惧II類。大切にしよう。

ドブシジミ。今回の調査でただの石ころだと思い、数え忘れられた子。弊社の田んぼではとにかくたくさん。

コオイムシ。弊社の田んぼにまずまずいるにも関わらず、稲株の中に避難する事で今回の調査をすり抜けることに成功。


以上

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