器用貧乏な動画ディレクターが今までやってきた2つのこと

新卒から映像(動画)業界に入り、ディレクターを始めてもうすぐ10年経ちますが、いまだに自分は「器用貧乏」だなと思ってます。

職場はコロコロ変わるし、フリーランスで勝負できるほどの強いスキルや実績もない。自己主張したいことも特にないし、稼ぐためには何でもするような意識の高い人間でもない。(お金はほしいけど)

どちらかといえば、誰かのために、目の前の仕事を一所懸命に取り組めることがモチベーションにつながるタイプだと自認しています。

良い動画、良い現場にしていくために、自分が大事にしてきた2つの要素があります。

①見て学び、真似をして、盗む

自分はテレビ番組のADからキャリアを始めています。一応マニュアルはありましたが、職人気質な世界なので「見て学べ」というスタンスが強かった。

またテレビ番組の場合、自分のオリジナリティではなく、番組のカラーに合わせて作る。今までのやり方を「真似」した上で新しいものが出来るか、という点が大事だったといえます。

最初の数年はひたすら先輩の動きを真似たり、一定の法則を見つけてそれをパターン化して、それが徐々に自分の思考や行動の基礎となりました。

その後、自分で多くの動画を制作してきましたが、多くはパターン化したものを盗んで「それっぽいもの」を作っただけ。バラエティ番組風のベタな演出や、起承転結でわかりやすい構成やカットを入れたり、流行っている動画をズラしてみるなど。

変に自分のオリジナリティを主張しても伝わらない。まずは相手の頭の中にあるイメージを具現化してあげる方が納得感が得られやすい。どうしてもそれだけではインパクトが足りない場合や、自分の守備範囲ではないものは、他のクリエイターやスタッフの力を借りてきました。

②期待値を調整する

修正が多い、その割に動画がバズらないなど、苦しい結果を何度も経験しました。自分たちのスキル不足やタイミングもあると思いますが、クライアントやスタッフ間での期待値調整を誤った結果であることも多いです。

ただ、期待値を調整するって難しい。制作に没頭してしまうと周囲の状況が見えなくなるし、運もある。それでも、そうならないように心がけてきたことがあります。

・動画は目的ではなく手段、案件の「真の目的」をつかむ

なぜ動画が必要なのか、自分たちに依頼したのか、与件を隅々まで深堀して、その案件の「真の目的」をつかんでおく。それに「動画を作ればあらゆる問題が解決する」わけではないことをしっかりとコミュニケーションしておけば、後々ズレが起きても軌道修正がしやすくなります。

また、自分たちがその案件を受けるメリットを明確にしておくことも必要です。「安定して稼ぐ案件」「クライアントとの関係性を良くするための案件」「社内的なスキルアップや実績作りの案件」など、目的によって予算やスケジュールの考え方も変わります。

・予算やスケジュールは正確に組む

たまに「機材一式●万円」や「10時〜15時 撮影」と、ざっくり書いてあるケースがあるのですが、これは良くないです。

このカットを撮影するには、カメラが何台必要で準備に何分かかるか、移動や撤収に人数が足りているか…など、細かいところまで想像し、なるべく正確に洗い出し、現実的な内容を組み問題がないか検証することで、相手にも具体的な仕事内容が伝わるし、全体的に仕事の質も上がります。

最悪なのは、当初よりも予算もスケジュールも大幅に超過してしまうことです。それだけで期待値は下がり、自分たちもボロボロになります。

・ギャラとロケ弁当はケチらない

予算が無いけど質は落としたくない場合、一番ディスカウントしやすいのは外注スタッフへのギャラです。ただ一度決めた金額を下げる交渉はお互い精神的にしんどいし、二度と受けてくれない可能性もあります。

ギャラ自体を下げるのではなく、拘束時間を減らす、機材を変える、シナリオ自体を変えてスタジオを辞めるなど、目に見える部分で調整すべきで、そこでディレクターの力量が試されると思います。それでもダメならクライアントに予算交渉をしたり、会社で負担する、若手のスタッフで試してみるなど、なるべく長期的な目線で考えるべきです。

それでも、ケチるべきではないのはロケ弁当です。同じ釜の飯を食うことで結束力も高くなるし、注スタッフはいろんな現場を見ており、ロケ弁当は現場でのテンションや仕事の質にわかりやすく直結します。

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器用貧乏だからこそ、こうやって俯瞰して見ることができるかもしれない。でも特別可視化できるスキルではないので、なかなかその意義を「わかってもらえないなぁ」というのが本音です。

それでも、必要とされるのであれば、これからも一生懸命やっていきたいと思います。


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