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競技によりスポンサー企業の業種に違いがあるかを調べてみた(前編)

コロナによる自粛期間中に「SNSと観客動員数に関連性があるのか」について先日記事にしましたが、実はもう一つ気になって調べ始めた内容がありますので、今回はその事について記事にしたいと思います。「SNSと観客動員数」に関してご興味がある方は是非下記もご確認頂ければ幸いです。

今回リサーチした内容は「競技によってスポンサー企業に違いがあるのか」ということですが、前編は「スポーツビジネスの基礎」となるような情報が多くなりました。

コロナの感染拡大によりスポーツ業界も非常に大きな影響を受けており、今までの「セオリー」や「考え方」が通用しなくなってきていますので、基本的な内容の振り返りから始めていきたいと思います。

1.スポーツビジネスの収益の柱とは

スポーツビジネスに携わっている方、スポーツビジネスを学んでいる方にとっては「釈迦に説法」かと思いますのでこの項目は飛ばして頂ければと思います。この後の内容を理解する上で重要な内容ですので、スポーツビジネスにあまり馴染みが無い方はご参考にして頂ければ幸いです。

まず、一般的には下記がスポーツビジネスにおける収益の柱とされています。

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最終的には全てが「ファン・サポーター・ブースター」に繋がりますが、左側が「to C」に近く、右側が「to B」の領域になります。コロナによる影響で無観客試合になると『チケット』『飲食・グッズ』の売上が激減していきます。また、『スポンサーシップ』も契約の内容によっては大幅な減額が発生しています。試合数が減れば『放映権』の減額も発生するでしょう。

今までは「スタジアムを満員にする」→「場内で消費して頂く」→「入場できない方が放送を見る」→「価値が上がる」というようなスパイラルがスポーツビジネスの一つのセオリーでしたが、その前提が崩れているのが現在の状況です。

もちろん、各球団・チームもこの状況を静観している訳では無く、この状況下で売上を創る為に様々な取り組みをしていますが、今までの売上から考えると非常に厳しい状況です。

2.プロスポーツチームの収支とは

上記に記載した「4つの収益の柱」をよりリアルに理解する為に、『J.LEAGUE』と『B.LEAGUE』クラブの実際の収支を下記に添付します。こちらは各リーグから毎年発表されているものとなります。また、各リーグ共に公開内容のポイントを説明した資料も合わせてリリースされていますので、ご興味のある方は各リーグの公式HPから是非ご覧ください。

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数字が細かくわかり難いので、数字の単位を合わせて『各リーグ売上TOP3』を抜き出して並べてみました。

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今回は収支の構造を理解する為のデータですので、『各リーグ売上TOP3』のデータをさらにリーグ毎に平均値を出してみます。

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このように並べると多少の違いはあれど、売上の構成比は同じような数字になります。『スポンサー収入 50~55%』『入場料収入(チケット) 17%』『物販(グッズ) 6~8%』というようなイメージです。また、『放映権』は「配分金」に入っているモノと「スポンサー収入」に入ってモノがあると考えられます。J.LEAGUEにおける『DAZN』、B.LEAGUEにおける『バスケットLIVE』などリーグが一括契約しているモノは「配分金」で支払われ、各クラブが直接契約をするローカル放送の売上などは「スポンサー収入」で計上されていると思います。その他にもリーグやクラブによって、計上の仕方が微妙に違いますが、ここでは『スポンサーシップ』が全体の5割程度の売上を創っているということをここではご理解いただければと思います。

3.『スポンサーシップ』のベネフィットとは

では、『スポンサーシップ』においてスポンサー企業が感じるベネフィット(利益・恩恵)とは何かという部分を掘り下げていきます。下記はアメリカの調査会社が2018年に『スポンサーシップ』に関してリサーチしたレポートから情報を抜粋し、まとめたものとなります。

【note資料】クラブビジネス収支_200613スポンサーシップ

一番ベネフィットを感じる権利・権益は『独占権』で、『認知向上』や『商標権』などが並んでいきます。ここで注目して頂きたいのは『看板広告』と『メディアによる広告露出』です。数年前から徐々に価値が低下している両項目ですが、『スポンサーシップ』で求められているモノが『メディア・ドリブン』から『イシュー・ドリブン』へと変化してきた影響と考えています。

もちろん、『看板広告』や『メディアによる広告露出』で価値を感じてくださる企業もありますし、球団・チームが売上を創る上では非常に効率が良い商材ですので、今回はこの『看板広告』をリサーチのテーマとして設定しました。

4.プロスポーツチームにおける『広告看板』の重要性

『広告看板』は動員数やメディアへの露出により価値が高まる為、全てのスポーツにおいて価値が高いかというとそうとは言い切れませんが、プロスポーツにおいては生命線となっています。

日本はスタジアム・アリーナを自前で持っている事例は少ないですが、15年前くらいから徐々に一体経営が増えてきました。一体経営をすることでシートの改修、サービスの向上をし易くなるだけでなく、『スポンサーシップ(広告看板など)』による売上も得ることができます。

横浜DeNAベイスターズが2016年に横浜スタジアムを買収しましたが、それまでは広告看板による球団の売上はほとんど無かったと考えられます。売上の50%を占める「スポンサー収入」の中で大きな割合を占める「広告看板」の売上を立てることが出来ないことがどれだけの痛手かはご理解頂けるかと思います。

<主な買収や指定管理>
 ・2003年 【指定管理】鹿島アントラーズ(カシマサッカースタジアム)
 ・2004年 【指定管理】東北楽天ゴールデンイーグルス(宮城球場)
 ・2006年 【買収】オリックス・バッファローズ(京セラドーム)
      【指定管理】千葉ロッテマリーンズ(千葉マリンスタジアム)
 ・2012年 【買収】福岡ソフトバンクホークス(ヤフオクドーム)
 ・2015年 【指定管理】大阪エヴェッサ(舞州アリーナ)
 ・2016年 【買収】横浜DeNAベイスターズ(横浜スタジアム)

5.スポンサー業種比較(大阪・三河)

今回は大阪府をホームタウンとする2チームとBリーグでもスポンサーが多い三河を比較してみました。こちらのリサーチは弊社での集計となるので、正確性は100%担保することはできませんが、大枠を捉える意味では意味があるかと考えております。

また、業種については「日本標準産業分類」を活用して整理しています。

【note資料】クラブビジネス収支_200613_15修正版

※内容に誤りがあり6/15に「大阪エヴェッサ」から「シーホース三河」へ訂正させて頂きました

上記は大阪にホームタウンを構える2チームと愛知にホームタウンを構えるシーホース三河を比較した表です。この表だけでは何かを紐解くのは難しいですが、オリックス・バッファローズの件数は他の2クラブの2倍以上のスポンサーが付いています。また、『建設業』『不動産業、物品賃貸業』の件数が多く、親会社のビジネスコネクト案件も多いかと推察しています。また、大阪エヴェッサは『製造業』が50%を占めており、これがバスケ特有なのかは引き続き調べてみたいと思います。

今回は前振りが長くなり、「競技によってスポンサー企業に違いがあるのか」という本題に深く入れませんでしたが、「後編」にて各リーグの比較をしていければと考えています。


最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
今後もnote、Twitterにて情報発信していきたいと思いますので、よろしければフォロー頂けますと嬉しいです!


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