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現実逃避

  (すべて嘘ですが)今朝のことです。草取りを終え、物置に鎌とバケツを仕舞いました。家に入るべく玄関へ歩き出すと物置から盛大な物音が響き渡りました。
 どうやら、片づけ方が悪く、何かが落ちてしまったようです。私は、片づけの片づけをするべく振り返りました。

 「?!」

「怪しいものではないのですが、ちょっと休ませてくださいね。」
 見たことのない女の子が何やらゴツゴツした機械を抱えて立っていました。

 はて、この子は、どこから、いつ来たのか。狭い敷地のこと、隠れる場所もなく、この子が、ここまで来る前に気が付きそうなものなのです。

「あっ本当に怪しいものではないんです。ちょっと過去からタイムスリップしてきました。」女の子は言いました。
「タイム・・スリップ・・・?」私は、やっと声を出します。
「あっ過去には戻れないんですけどね。過去に失ったものを探すより未来に出来上がるものを見つける方が簡単なんです。」

 暑い中、草取りなんてするものではありません。多分、幻影でしょう。でも、目をこすろうと顔をつねろうと、女の子は消えません。
 私は勇気を出し、女の子に話しかけてみました。
「休むのはいいけれど、どこから来たのですか?」
女の子は言います。
「過去からとしか・・。機械も、これ一台ですし、未来にしか進めないので、よく言われるタイムスリップしてきた人を見たことがないっていうアレも仕方がないんです。証明は難しいです。私のお財布は古いお札でいっぱいですっていうんじゃダメですか?」

 取り出したお財布には福沢諭吉や野口英世が鎮座していました。
 
「・・・。」

「あれっ?まだ普及してませんでした?私、一年前から来たんですけど・・。」

 今日、単位のテストが終わったのですが、テスト中って時間が恐ろしく速くすぎるのです。たぶん時間は伸びたり縮んだりするんです。
 だから仕方がないんです。現実逃避くらいしたくなるのです。



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