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坂の途中の家を読んで

 角田光代さんの作品です。
 3歳の女の子をもつ専業主婦の主人公が、子殺しの事件で補填裁判員に選ばれるお話です。
 角田光代さんの瞬間の空気感を切り取り言葉にする力は、怖いほど的確で鮮烈です。

 旦那さんと娘と主婦である主人公が暮らす家。その小さな社会ではいわゆる一般社会的に正しいことや法律ではなく、その小さな国(この場合、家庭内)のルールや力関係が何よりも物を言います。
 しかも強者は、その影響力に気づかなかったり、気づいても弱者の気持ちを本当の意味で鑑みようなどとしたりしません。弱者は権力を振り回される度、自信を失い、自らを疑い、考える力を失います。

 そんなつまらないことで何で怒れるの?10円安い卵がなんなの?って言えちゃう御主人(まさに主人!!)にこそ読んでいただきたいけれど、読まないだろうなぁ…。取り扱い説明書的な本で、わかったつもりになられても、この感覚がわからないなら、熟年離婚かなぁ。
 あれ?私、子供もご主人も、いなかった(笑)。のに、そんな気持ちになっちゃう本です。

 こういう小さな世界の(会社や家庭やクラスや…)法律は、スタンフォード監獄実験(あれ、どうなんでしょうね)などで試さずとも、ねぇ…。
 
 今苦しむ人、後になれば笑い話と痛みを耐える人、耐えきって古傷を抱える人へ。
 近視眼的な悲愴感に溺れないで。あなたは、そんなに弱くなかったはずです。バカにしてくるヤツはバカなんです。保護される事と自由を無意味に奪われる事を勘違いしないで。権利は戦う人にもたらされます。
 小さな国の中で、どんなにもがいても、救いは来ません。鎖国をやめ黒船(一般社会)を受け入れなければ、人は変われません。
 案外、権力を振るう側も歪さに苦しんでいるものです。
 でも権利を手放し目をつぶるのが楽チンな人もいるのかな・・。

 って本の感想どこ行った…。
 ともあれ、自分の見積もりは的確に、そして権利は戦わねば得られぬと思った次第。
 
 的確な言葉を紡げる角田光代さんは、やっぱりスゴい人だぁと痛感。


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