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「ビジネスの未来〜エコノミーにヒューマニティを取り戻す〜/山口周」から考える、私たちが向かう先とは

ひたすらに成長を追い求めるビジネスへの息苦しさ。低迷する経済状況、混沌たる社会情勢。

これまでずっと追いかけ、目指してきたことへの行き詰まり感が、コロナ以前から、確かにあったように思う。

ITベンチャー、スタートアップなど、成長ビジネスどまんなか(?)で仕事していた私が、プロコーチという道を選択した背景には、世の中を流れる空気の影響もあったのかもしれない。

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか──。

独立研究者、著作家である山口周さんのなかで生まれた疑問。この疑問をさまざまな角度から考察したのが「ビジネスの未来〜エコノミーにヒューマニティを取り戻す〜/山口周」だ。

年明けに購入し積読していたが、今かなという直感が働き、手に取った。なぜ、今というときに買わないのか。なぜ、積読は起きてしまうのか。甚だ気になり、これをテーマに何か書きたい気もするが、一旦置いておこう。

後ろ向きでもなく、変にポジティブすぎもしない。冷静にフラットに現状が読み解かれ、ビジネスの未来が新しい視点とそこはかとない前向きさでもって語られていた。

「私たちはどこにいて、どこへ向かうのか?」

山口さんは言う。

私たちの社会は、「物質的不足の解消」というビジネスの使命をほぼ達成し、文明化の先の「高原社会」へ向かっている。

そして、様々なデータを使って、このことを裏付ける説明している。

じゃあ、文明の先の「高原社会」ってどんな社会なんだろうか。いまの社会との対比でこんなふうに表現されている。

「便利で快適な世界」から「生きるに値する世界」へ。
「文明的な豊かさ」を求めることから「文化的な豊かさ」へ。
「未来のために今を犠牲にすること」から「いまを大切にする生き方」へ。
「成長のために人間性を犠牲にすること」から、「ヒューマニティ」へ。

すでに肌感覚として感じている人も多いのではないだろうか。

自分らしく、自分の人生を生きたい。自分が生きる意味って何だろう。そういうことを探究しながら生きることそのものが、人生の豊さや幸せに繋がっているように感じている。まさにコーチングで向き合う問いでもあり、コーチとしての活動そのものが、この世界への誘いのようにも思う。

振り返ってみると、人間らしい生活を封印して、ひたすらに仕事してきた時間が長かった。未来のために、一生懸命勉強したり、積み上げる仕事をしてきた。だけど、改めて思う。本物の充実感は”いま”にしかない。過去にも未来にもない。いまこの瞬間を丁寧に過ごすこと、味わい尽くすことが、生きているという実感に繋がっているんだと。

文化的な豊さかどうかはわからないが、見えないものに意識が向き始めているとは感じる。それがモノであっても、モノそのものではなく、モノそのものに宿る精神性だったり、意味だったりを自然と見ている。

私のなかにも、コーチとしてクライアントに関わっていても、こういうことが少なからず起きていると感じる。個人は自然と気づき始め、自分と向き合い始めているんだと思う。でも、社会全体やビジネスの現場は、これまでの慣習や大きな流れに飲み込まれたままだ。この大きな歪みはどうなってしまうんだろう。

「私たちは何をするのか?」

では、高原社会を「生きるに値する世界」にするために、私たちは何をするべきか。3つの提案がなされている。

①真にヤリタイコトを見つけ、取り組む
②真に応援したいモノ、コトにお金を使う
③ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入

注目したいのは、①真にヤリタイコトを見つけ、取り組む である。

「自らが社会彫刻家になれ。社会の建設と幸福の実現に関わることで、社会は真に豊かで瑞々しくなる。」

高原社会の活動テーマになってくるのは2つ。社会的課題の解決(経済合理性の外側にある未解決の問題)、文化的価値の創出(生きるに値するモノ、コトを生み出す)だ。そして、これらの原動力になるのは「人間性に根ざした衝動」であると。つまり「自分が夢中になれるかどうか」だと。

夢中になっているときって、圧倒的にそのことを考えているし、加速度的に力が湧いてくる。

「夢中になれるものがない」。コーチングでもよくテーマになる悩みだ。でも、よくよく聴いてみると、そのタネはその人自身のなかにある。でも、その存在に気づいていない、そしてタネを育てることができていない。タネはうんうん考えていても、見つからないことが多い。動いてみて、やってみると、不思議と身体感覚が違うことがわかる。ああ、これがタネだったんだって気づけるのだ。

山口さんからのメッセージ

本書で一番響いたのは、最後のメッセージだ。

「私たちも、この大きな社会システムの一部であり、いまここにいる私から始めることが重要だ。」

いまの社会や制度を嘆いたり、評論家になって批判しても、何も変わらない。もっと言えば、自分もその状況を作り出しているひとりである。自分から変わろう、始めようということだ。

自分が変わることの意味が、バタフライ効果を例として紹介されている。

さいごに

これからの社会に思いを巡らせ、未来を空想した。

そして、いま自分自身は何を選択するのか、どういう行動をとるのか。自分のあり方や行動を考えた。

今と未来は繋がっている、そんな風に感じられたのも、この本の素晴らしいところだと思う。



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