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落語界のロングテールキュレーションに成功した「シブラク」

伝統芸能やオールドファッションな文化や企業を再生するときのソリューション見本例として参考にしたい「シブラク」。

その昔、立川談志がテレビ番組「笑点」を、若手落語家育成の大喜利番組として企画したのと同様に、テレビではなくライブで若手落語家活躍の場を提供したのが「シブラク」を生んだサンキュータツオ氏。

二つ目の若手落語家に光を当て、舞台装置を工夫し、コンテンツ化。新たな顧客獲得に成功した。


「シブラク」のプログラムは若手、それも二ツ目が中心だ。予算面からの苦肉の策かもしれないが、これが功を奏した。ここの客層は従来の落語ファンとは異なり、明らかに最近聴き始めた若者、それも「シブラク」だから来る、という人が多い。ただし「女性客が多い」というのは近年の落語界では常識であって、驚くのは単に取材者の勉強不足。ここではむしろ、「二ツ目なのに客が来る」ことに驚くべきだ。

記事中に出てくる落語ファン同様、私も「シブラク」を毎月観に行くファンです。シブラク人気の理由は2点。ひとつは渋谷の映画館という環境、もうひとつは落語、創作、漫才、講談、浪曲というジャンルクロスオーバーのオムニバス型プログラム。

そして、実力派の二つ目が突如出現したわけではなく、ここ数年、真打ちといっしょに寄席で高座をこなしてきた経験値が実力派を数多く生んだのだと思います。裏を返せば、場数をこなすだけの機会をもらえていなかったということです。

週刊ダイヤモンドによると、落語会は全体の65%が真打ちで占められているそう。これまでは二つ目が活躍する場が自ずと限られていたそうです。

現在、東京の落語家数は545人なのだが、そのうち真打は352人。全体の65%が真打=師匠で占められる逆ピラミッドの構成になっている(次ページ図参照)。まさしく“真打バブル”である。

サンキュータツオ氏が、真打ちバブルである落語界の構造に目をつけたのかどうかわかりませんが、活躍の機会が欲しい若手落語家と、同世代で笑いの感覚がマッチする落語家の話を聴きたいオーディエンスの課題をキャッチしていたのでしょう。

課題解決のために映画館と落語以外の伝統芸能を導入したことが、連日満員御礼の結果を呼んでいます。


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