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インナーブランディングにクリエイターとして関わったら、ものすごい量のワクワクを生み出せた話。

今朝、採用代行を行なっている企業の方の、こんな記事を読みました。

インナーブランディングのメリットとデメリットが簡潔にまとめられており(絶対に内容的にはやった方がいいけど、コストと時間がかかるので天秤にかけて判断するべき、ということ)、では具体的にどんなことをやったらいいのかという施策例の中に、堂々とムービーが挙げられているのを見て、嬉しかったですね。

自分が力を入れているブランディング・ムービーの方向性が、間違ってないことを確信できました。良い記事に出会えて嬉しいです。

●その映像の効果は持続可能であるのか?

一方で、この記事のムービー例を読んで一つ思うことがありました。
そのムービーの制作例として、頑張ってる社員の方を「情熱大陸」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」のようなTV番組のパロディ的演出で仕上げるものだったんですね。

これ、打ち合わせをしていてクライアントの側からよく出てくるアイディアなんです。そういうものを作ってみんなで共有したら、連帯感や士気が高まるだろうと。

確かに、有名番組を模したものに自分の仕事している姿をのせられたら、嬉しいですね。
しかし、最初は嬉しいけれど、これっていわゆる結婚式で流すムービーのように、その瞬間を楽しむ手法だと思うんです。
結婚式ムービーを、それから長く続く結婚生活の中で何度も見返す人って、あまりいないですよね。
その場を盛り上げ楽しませる、その瞬間の感動を演出する、という意味ではTV番組のパロディや結婚式ムービーは役立つ面があると思います。

けれど、それは長くは続きません。
社内でその人はいじられることもあるでしょうし、それを気にせず前に進める人なら良いですが、段々と気が重くなり、やがてはその映像がデジタルタトゥーのような陰を落としてしまわないか…そこまで配慮できることが、クリエイターとして必要な能力だと思うのです。

つまり、その映像の効果は持続可能であるのか?

別にインナーブランディングに使用する映像はバズらせることが目的ではないですので、効果の持続可能性を最大限にアップさせるよう、工夫を凝らしたもの作りをできそうなクリエイターと、ぜひ付き合うべきだと思うのです。

●私がインナーブランディングで作った体験価値

ここで、私が過去に手掛けた例をご紹介したいと思います。

クライアントは従業員数が数千人規模の大きな企業で、その中のとある事業部のインナーブランディングを担当しました。
その事業部単体で、メンバーは200名ほど。
組織が大きいゆえに、社員の意識をまとめるのが難しいというのが先方から相談を受けた際の課題でした。

私が考えたのは、数名の選りすぐった社員の方の仕事ぶりを映像にするよりも、全員にインナーブランディングから生まれる体験価値を感じてもらうことの方が大事ではないか、ということでした。
体験価値というのは、映像を見るだけでは生まれません。
映像というのは大事だけれど本質的にはツールに過ぎず、一番大事なのは社員の方々の心に残る体験価値、ということですね。


具体的に何をしたのかと言いますと、まずは約200名の方々全てにヒアリングを行いました。
テーマは「自分たちの仕事がどんな未来を描くのか」。
1対1だと構えてしまうので、グループディスカッションの形で何度もその機会を設け、全員分の「自分の仕事に対する思いと将来のビジョン」を集めました。

そしてここからが面白いのですが、イラストを描く職業の方の中には、「グラフィックレコーディング」というものが得意な方がいます。
そういう方にお願いし、行なってきたグループディスカッションの映像を全て観てもらって、そこに集められた約200名の方の話の内容を素敵なイラストにして頂きました

一目見れば、その事業部の中にどんな未来への夢があるのかが、手に取るように伝わるイラストです。

さらに私のプランは、ここで終わりません。
今度はさらにそのイラストを大きく拡大し、社員の人数分、およそ200枚のパーツに切り分けました

そして、お話を聞かせて下さった方々全てに手渡しました。これに色を付けてくださいと。
皆さん、一体これが何の紙なのかこの時点ではわからないながらも、童心に返ってとても楽しそうに塗り絵をして下さいました。


そして集まった、一度はバラバラになったイラストのパーツ。
今度はこれを、全て元の形に貼り合わせ、大きな絵にしました

集めてみると不思議なもので、全く別の配色、別のタッチで塗られているにも関わらず、どこか統一感があり、そして一人の人が塗るよりもずっと魅力的に見えるんですよね。

私はこれを大きな額縁に入れ、社内に飾って頂きました
そして、社員の方々に種明かしをしました。
皆さんが話してくれた「自分たちの仕事がどんな未来を描くのか」というお話が、集まったことでこんな素晴らしい絵になりました、と。

共創」と、言葉ではよく聞くフレーズですが、これを皆さんは無意識の内に日々体験していらっしゃるのだという、強いメッセージになって伝わったと思います。
皆さんの表情がいつもの仕事と違ったものになっているのが、こちらにもビシバシ伝わってきました。


●映像とは、体験価値をフレッシュに保つ保存庫

ここまでのプロセスはじっくりとカメラに収めていましたので、最後にはそれを使って一本のブランド・ムービーを完成させました
ようやく私の本業です(笑)。

そのムービーは社内のイントラでいつでも目にすることができますし、とても個性的で夢の溢れる大きな絵は、毎日その横を通り過ぎながら見ることができます。
映像というのは、あくまで体験価値をフレッシュに保つ保存庫としての役割がふさわしいと、インナーブランディングのような案件では特に思います。

やはり、自分達は映像の専門家だからムービーを作って終わり、ではダメなんですよね。
その人の中に強烈な非日常の体験価値を生み、そこで感じた思いを、日常に当たり前のように思い出すことのできる環境を作る
これが出来てこそ、だと思いますし、そのためには職業の垣根や分業意識、一般常識は軽やかに飛び越えることが必要になる。
これこそクリエイターが得意とするものなんですけどね。

インナーブランディングの効果を、どれだけ持続可能にできるのか?
それに真剣に向き合ったことで生まれた企画でした。
手前味噌ではありますが、ここまでのプランが立てられて、初めて「インナーブランディングに関わるクリエイター」を名乗って良いのではないかと思うのです。


今回ご紹介したインナーブランディングの手法は、私たちの会社SUGOIが手掛けたほんの一つの事例に過ぎません。
この企画を受け入れて下さった素晴らしい企業さんとは、数年を共にして様々な施策をさせて頂きましたので、そのことについてはまた機会があれば書いてみるつもりです。

インナーブランディングの施策をSUGOIに相談するとどれだけワクワクできるか、というのが、この記事を通じてみなさんに上手く伝わってくれたら嬉しいなと思っております。

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