認知症の高齢者による事故が多発 これからどうするべき?

認知症の高齢者による事故が多発している。

警視庁のデータによると、2014年に死亡事故を起こした75歳以上の運転者のうち約4割が、直近の認知機能検査で、記憶力・判断力が「低い」「少し低い」と判定されているという。

能力が低下した高齢者が事故を引き起こす可能性は非常に高い。能力の低下を自覚している高齢者はなるべく自ら運転を控えるように努めるべきだろう。

しかし、そうはいかない複雑な事情も残っている。

例えば、本人に能力低下の自覚が全くない場合である。周囲から見れば確実に物忘れなどが多くなり危険なことは分かるが、当の本人は無自覚で運転している場合、安易に運転を止めさせることはできない。

高齢者には一定のルールさえ守れば車を運転する権利を与えられるし、安易に運転を禁じることは個人の自由を奪うことにもつながりかねないからだ。

また、本人が能力の低下を自覚していても、運転をあきらめられない事情もある。例えば、田舎の過疎地の場合、車はなくてはならない交通手段になっている。バスも利用できるが、数時間に一本程度というところも珍しくはない。このような場合、離れたスーパーに出かけるだけでかなり時間がかかってしまう。

これではいくら周囲の人たちが本人を説得しても、車を手放すことはできないだろう。本人が運転を辞めたくても、状況がそれを許さない。

こうした不便さを解消するためには、自治体で宅配便業者を支援し、高齢者が簡単に買い物できる仕組みを作ることが必要だろう。

また、交通の便も大幅に改善する必要がある。田舎の過疎地では大型バスを増やすことは財政的に無理があるため、代替となる交通手段が必要だ。

例えば、一般のドライバーがマイカーで客を運ぶ「ライドシェア(相乗り)」サービスを充実させ、過疎地の高齢者でも利用しやすいように仕組みを作っていくことも必要だろう。

将来的には、現在 Googleなどが開発を進める「自動運転車」の導入も必要になる。


近年では認知症の人の運転が社会問題化しているのを受け、年々道路交通法が厳しくなっている。確かに認知症の危険がある高齢者を運転させない法律は必要だろう。だが、多くの高齢者たちが車を失ってからも充実した生活を送れるようにサポートする努力も必要だ。

法の名で取り締まるだけでは、豊かな高齢社会は訪れない。



参考:

http://www.asahi.com/articles/ASJ226CYBJ22ULZU00G.html

http://www.asahi.com/articles/ASJ3L024CJ3KOIPE03C.html

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98114880X00C16A3000000/

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