アップルのロック解除問題と国家権力によるプライバシー侵害の脅威

アップルとFBIの衝突が波紋を広げている。

事の発端は2015年12月に起こった銃乱射事件。

14人の犠牲者が出た事件を解決するためにFBIは裁判所を通じて、アップルにロック機能の解除に協力するよう要請した。

しかし、アップル側はその要求を拒否。

パスコードロック機能や端末のデータ消去機能を回避する方法を持ち合わせておらず、協力のしようがないと主張する。

また、「バックドア(裏口)と呼ばれる回避機能を存在させることは、政府にすべての端末のデータを取得できるようにさせる」とし、FBI側に協力できない旨を伝えている。

これに対し、米国内の反応は大きく二分することとなった。

グーグルやマイクロソフト、フェイスブック、ツイッター大手テクノロジー企業は、アップルの主張に賛同を表明。

一方、世論調査では「ロック解除に応じるべき」と答えた人が過半数に上るなど、ややFBI側を支持する人が多くなっている。

FBI側を支持する人の大半はテロに対する強い危機意識を持っており、個人のプライバシーよりも社会の安全を重視する傾向がある。

9.11以降から増してきたテロへの警戒心や頻発する銃乱射事件への恐怖を考えると、そうした態度はむしろ当然とも言うべきだろう。

だが、私たちは同時に個人のプライバシーが国家権力によって侵害されることも警戒しなければならない。

米国の司法省は「特定のiPhoneのロック解除は可能」であるとしているが、アップルがロック解除のソフトウェアを作成することで、不特定多数のiPhoneから情報を引き出すことは技術的に可能になる。

アップルが主張する通り、それが不特定多数のiPhoneのロック解除に利用される危険性は十分にあり得るだろう。現時点では「特定のiPhoneだけロック解除」するという保障はどこにも存在していない。

司法は中立な立場で正しい判断を下す場所ではあるが、今回のようにどちらが正しいか判断しづらい問題はこれからも生じてくる。その際に、司法側が常に正しい判断を下すことができるという保障はない。

国家権力によって個人がプライバシーを侵害されるようなケースが増えるなら、それはもう劣悪非道なテロ行為と同等の脅威になりうるのではないだろうか。

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