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葉山のヒミツキチ森学園での「一日先生」全6回を実施しました

昨年見学に行って感銘を受けた葉山のヒミツキチ森学園さんで、小学生向けのシステム思考レッスンを実施しました。備忘録がてら、グループリーダーあおちゃんのブログと併せて、レッスン内容を少しだけ紹介します。

第1回 『しあわせのバケツ』とつながりの輪

「システムって何だろう?」という問いかけからスタート。みんなでつながりあったループになって、システムの不思議な動きを体感してみたり。簡単なルールで全員が動いているだけなのに、システム全体はとっても複雑な動きを生み出したり。お互いにつながり合うシステムのオモシロさと、システムを考えることの大切さを学びました。

後半は、絵本『しあわせのバケツ』の中にあるシステムを、つながりの輪というツールを使って絵に描いてみました。誰かに親切にすると、相手のバケツも、自分のバケツもいっぱいになって、うれしい気持ちになれます。起きていることの因果関係を図にすることで、相手と一緒にどうすればしあわせシステムをつくることができるのかを考えました。

この授業の様子は、学園ブログでも紹介してくれています。

第2回 『きりんはダンスをおどれない』

ダンスが苦手な背高のっぽのきりんのジェラルドの物語を読んで、ジェラルドの気持ちが時間とともにどんなふうに変わっていったかを時系列変化グラフにしていきます。

そして、苦手なことが、どんどん苦手になっていったり、得意なことがどんどん得意になっていったり、ジェラルドの変化に気づくと、その変化を生み出しているシステムがだんだん見えてきます。みんな、つながりの輪をじょうずに使って、ものごとのつながりを考えてくれました。

みなさんのまわりには、どんなどんどん苦手システムやどんどん得意システムがあるでしょうか? どんなつながりが、そのシステムを動かしているでしょうか?

第3回 『ちいさいタネ』と自然のシステム

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エリック・カールの絵本『ちいさいタネ』を使って、時間とともにタネの数がどんなふうに変化するかをグラフにしていきます。たくさん飛び立ったタネが、時間とともに枯れてしまったり、食べられてしまったりして減っていき、最後には大きな花を咲かせて、またたくさん、とてもたくさんのタネを飛ばします。

そんなふうに自然界に存在しているサイクルや、いろんな生命がつながりあってバランスを取っていることを、そろそろおなじみになってきた時系列変化パターングラフと、つながりの輪を使って考えていきました。写真は、物語に出てくるいろんな要素を並べて、つながりの輪を作成している様子です。ヒミツキチのみんなは、手を動かして何かを創ることが、本当に大好きなんだなと感じる、没頭っぷりでした。

第4回 『ニホンオオカミとカモシカと猟師の話』

この日は、ループ図に挑戦。これまでのお話で学んできたいろんなシステムを思い出して、学園内を探検しながら、いろんなシステムを探します。時計の短い針と長い針が影響し合っていることに気づいた子がいたり、自分たちの服にくっつく植物のタネに着目する子がいたり、いろいろなシステムを見つけることができました。

そして、学園のワールド・オリエンテーションの時間に学んだ、ある島でのニホンオオカミとカモシカ、そしてカモシカを獲る猟師のシステムを、ループ図を使って考えました。オオカミの絶滅によって天敵がいなくなったシカは、当初猟師によって数が増えすぎないように抑えられていました。しかし、猟が行われなくなるにつれて、増えすぎたシカは餌の木の実や葉っぱを根こそぎ食べてしまい、だんだん数を減らしてしまいました。

複雑につながり合った自然界では、1つのできごとが、予想外のできごとばかりを引き起こします。生命のつながりや、じっくりとものごとを見ることの大切さを学びました。

第5回 『クマが出た!』ニュースから、システム構造を考える

山形県のブドウ農家さんが、クマに高級マスカットを食べられてしまう被害に遭ったニュースから、このできごとの背後にあるシステムをみんなで考えてみました。

私たちの普段の思考は「農家さんがかわいそう」「悪いクマをどうしてやろう?」と、対策を考えることにばかり向かいますが、今日はシステム思考の氷山モデルを使って、「このできごとを引き起こしているものがあるとすれば、いったい何だろう?」と考えます。

クマの餌が減ってるのかな? という話から、気候変動のことを考えたり。昔は里山があってクマとヒトの住処が分かれていたのに、今は里山が荒れちゃったんじゃないか? どうして荒れちゃったんだろう? という疑問から、地方の高齢化と公共サービスの低下や、都市への人口集中、都市部に食料や物品を届けるために輸送や物品の製造が増えて、CO2の排出が増えていくシステムを考えたり。。。

「どうしよう?」から「何がこれを引き起こしている?」へ、問いを変えることで、いろんなシステムが見えてくること、そして解決策へのアプローチが変わることを体験しました。

第6回 『いっぽんの鉛筆のむこうに』

最終回は、2年生の女の子から、最近のワールドオリエンテーションで学んだ人種差別のシステムについて発表してもらいました。勝手な思い込みが差別意識を生み、その意識が私たちの行動につながり、また差別的な思い込みを強化していくシステムを、ループ図を使って説明してくれたことに驚きました。

また、アメリカに関係ある人にインタビューして聞いた、「差別の学校」という、差別意識に気づいて、行動を修正していくような場所に通うことで、その連鎖を止めることができるというお話も共有してくれました。その様子を見ながら思うことは、このシステム思考は、子どもたちにとって本当に自然なアタマの使い方にフィットしているんだろうということ。「人間はだれしも生まれつきのシステム思考家だ」とは、よく言ったものです。

後半では、いっぽんの鉛筆ができるまでの物語を読みながら、鉛を掘る人、運ぶ船で料理を作る人や工場や文房具屋ではたらく人まで、たくさんの人が関わっていること、そんなシステムが私たちの生活を支えていることを学びました。また、その鉛筆があるから、私たちは文字を使って、勉強してたくさん考えられるようになって、しあわせな家族や社会をつくっていくことができることに気づきました。

画像2転載ヒミツキチのブログより

全6回(各2時間)の授業で実施したのは、こんな内容です。

相互に影響し合うつながり=システムのおもしろさを体感してもらうことを大切にしながら、グラフを使って時間とともに起きる変化を考える習慣を育んだり、複雑な因果関係をつながりの輪やループ図を使って読み解く力を育てたりしています。

昭和女子大学附属こども園やヒミツキチ、そしてオンラインで実施している子ども向けシステム思考レッスンは、今年で4年目を迎えます。ぼくが参加したのは2019年からですが、その間にたくさんのコンテンツが生まれてきて、ようやくみなさんに紹介できるようなものになってきた気がします。

2021年度は、よりたくさんの子どもたちに届けていけるよう、レッスンの進め方をまとめたり、指導する先生向けのプログラムも作っていけたらなあと思っていますが・・・さて、どうなるやら。ご協力・ご支援いただける方はどうぞご連絡くださいーと、ゆる募で閉めます。


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