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【人材定着の組織作り】その5 社内コミュニケーションについて考える

 人材定着に関する記事の更新が、だいぶ滞っていました。筆が乗らないとは、まさに私のような状態を表現するための言葉なんだろうなあと、まるで他人事のように思っていました。すみません。やっと重い腰を上げて人材定着に関する記事の続きを書いていきたいと思います。
 すっかり時間も経ってしまいましたので、まずは全体図からおさらいです。

人材定着の全体図

今回は、④と⑤で構成されている人材定着の中核部分となる組織づくりの中の⑤社内交流について述べていきます。
既に何度も述べていますが、人が会社を辞める理由は、簡単に言えば、

・ 労働条件
・ 収入
・ 人間関係

のどれかです。これ以外にはないと言っても過言ではありません。
本当にごく一部の意識の高い方は、『成長できる環境へ』とか、『一度きりの人生、後悔したくないからチャレンジします』や、『コンフォートゾーンから抜け出したい』といったことを退職理由とされますが、こうした意識の高い方の退職理由の中にも、必ず、前述の3点は、小さくても必ず(文中2回目)あると断言できます。
ですから、逆に言えば、この3点で不満を爆発させない(不満は必ず生まれるのでコントロールするという意味で爆発させないという表現を使っています)方法を実行すれば良いということになります。

 今回の⑤社内交流での施策は、人間関係 での不満を爆発させないための施策と位置づけています。それでは、詳しく見ていきましょう。

1.社内交流に必要な8つのTips(ヒント)

 いつもの通り、社内交流、社内コミュニケーションについて、当社の「考える8つのTipsを図にまとめてみました。

社内交流

図に沿って、順を追ってみていきましょう。まずは、【目的設定】からです。

『社内コミュニケーションをすることに、目的設定なんか要りますか?』という質問が出てきそうですが、これが実に重要なのです。
目的設定をせずに、『社内コミュニケーションの活性化だ!』と張り切り、頑張って社内報を作ったり、イベントを企画したり、あるいは、日報を運用したり、朝礼でのスピーチを慣行したり、ありがとうをITシステム化したりと、いろいろと施策は行ったとしても、そもそも、何のためにやっているのか?が理解されないと、社員からの反発の元にもなりかねません。そもそもシラケて施策が全く機能しないはずです。

 実は、私も「その性格(タチ)」なのですが、同じ職場にいるという理由だけで、積極的に人とコミュニケーションするのは疲れるし、ムダと思っている人材が一定数存在します。もちろん、皆「大人」ですから、そんなことは口にも態度にも出しませんが、ココロの奥では、性格的にそう思っている人は確実に存在しています。感覚的には、5人に1人くらいはいると私は思っています。

では、残りの5人のうち4人はどうか?と考えても、性格的には交流受入れOK体質だったとしても、強制的に社内交流に参加させようとすると「やらされ感」が出てしまい、完全にシラケてしまいます。一度、何かにシラケさせてしまうと、その他の社内コミュニケーションのための施策も、効果が一気に半減します。

以上のことからも、会社にいるときは、社内コミュニケーションは業務であるという明確なルール設定のもと、その目的を明確にしておく必要があります。「人は人と交わりたいはず」という人間の根本的な欲求にすがりたいところではありますが、そもそも、友人でも家族でもない人の集まりである職場の中で、その性善説は存在しない考えた方が良いでしょう。

 あくまでも社内交流は、業務であり、社員としての責任であると、認知させておくべきと考えています。業務であり各自にも責任がある以上、目的設定はあるべきと捉え、設定しておくべきと提唱しています。

 業務によっても異なると思いますが、大まかなところでいえば、社内コミュニケーションを推進するための目的は、例えば、

「円滑な社員同士の交流により、自分が関わっている仕事の役割だけではなく、同僚の仕事内容、会社についてをよく知ることができ、結果として労働生産性を向上させること」を目的としている

といったような内容にはなるかと思います。参考にしてみてください。

2.非効率重視

 既にいくつかのコミュニケーション施策が行われていれば良いですが、まったく新しく何かに取り組もとすると、受け入れる社員側からは、前述の目的設定を伝えたとしても、「何で??」「今の仕事に直接は関係ないし」「時間のムダでは」のような意見が出てくることが予想されます。これも皆「大人」ですから、いきなり声や態度には現れてきません。社員のココロの声となって現れます。

 オジサン(私)の昔話にはなりますが、昭和から平成初期までは、仕事の中にムダがあることは悪ではなかったのすが、平成中期以降、現在の令和時代には、ワークライフバランス、業務効率化、副業OK(残業なし)という社会の変化に伴い、仕事時間内のムダは悪であるという空気が流れています。

社会は時代の求めに応じて変化してきていると思うので、悪いことではないのですが、とかく、短期的に効果の出ないこと = ムダ、という考え方になりがちなので、社内コミュニケーション施策へも「ムダでは?」という意見は出てくることが予想されます。朝礼時間を少し伸ばして、各自発表時間を入れるなどすると、反発あるかもみたいな予想です。

でも、これに屈してはいけません! 前述の通り、目的あってのことですから、ムダでは?といった意見があっても、リーダーは、当面は屈せずに、ある程度までは、やりきる覚悟が必要です。

会社のため。生産性向上のため。と伝えていくことで、少しづつ理解も成果も出てきますので、諦めないで、社内の声も聞きながら、推進していく必要があります。社内の声に押され、施策が中途半端になってしまいますと、本当にムダになってしまいますし、次に何も始められなくなってしまうので、始めた施策は、更に加速させるぞ!と信じて突き進む必要があることを忘れないでください。

3.一言推奨

 これは何かと申しますと、社内の会話は必ずしも、文章で構成された会話(テキストチャット含む)ではなくても良いです、という内容です。

 このnoteもそうですが、スキ!を押されるだけで、私は相当にテンション上がりますし、次へのモチベーションに繋がります。これと同じことでして、Slackでも何でも良いのですが、受信者からのちょっとした反応があれば、発信者は満足しますし、また次に発信したくなるので、反応も、まずは、ほんのちょっとのことで良いと思います。

当社もSlackを使っていますが、既読後にリアクションすること(いいね!みたいなマーク)をルール化しています。既読確認という意味もありますが、徐々にマークの選び方や、使い方が変わってくるので、それだけでも楽しいです。

発信者は、ついついコメントが欲しくなりますし、みんなからの意見が欲しい!なんて言いたくもなりますが、意見が出ないのは、発信者側の問題として

・情報共有の質が悪いのか(前提や詳細な情報を共有できていない)
・そもそも情報がつまらないのか?

のどちらかだと思い、多くを求めすぎてはいけないということです。ここで申し上げたいことは、皆に関心のあることを情報提供すれば、そこでは闊達な意見交換がすぐにできるとは思いますが、なかなかそうはいかないと思いますので、いきなり会話を求め過ぎないという方法もありますよ、ということです。多くの人にとって、コミュニケーションでは、受信はOKだけれど、発信は苦手というパターンだと思いますので、ちょっとしたシグナルを返すというコミュニケーション方式を認めてあげるだけで、実は1歩も2歩も前進していると思います。

4.オンライン前提

 コロナ騒動の影響もあり、一気にリモートワークが進みました。ほんの数ヶ月前までは、一部の企業を除けば、全員出社が当たり前の文化だったのに、今や定時に「全員出社」の号令をかけたりすると、意図せずブラック企業の仲間入りくらいの世論にもなってきました。環境変化のスピードが早過ぎて付いていけません。。
 とはいえ、今回巻き起こったリモートワークは、今後も加速していくと予想します。コロナ騒動が一段落したとしても、世の流れとして、働き方改革、地方創生、ワークライフバランス、などなどといった社会変化の波には逆らえないと思いますので、結果として、今回のコロナ騒動を機に拡がったリモートワークは、今後も拡大&定着していくと考えておくと良いでしょう。なので、リモートワークで働いている人もいる前提で、社内交流を設計しておくことは、もはや必須です。
 またしてもオジサン話で恐縮ですが、リモートワークが始まって、その効果や是非が議論されている中で、聞いた意見のひとつに、

『オフィスで仕事してると、「ねえ、ちょっと今いい?」って声かけられるのが本当に嫌!』

というご意見がありました。私からしたら、『何それ!?』ですが、でもこんな意見もあると知った上で、社内コミュニケーションを設計しておかないといけない時代なのす。もはやオフィスレイアウトとかの話ではないですね。。。

 これからは、オンライン前提で社内コミュニケーション活性化を考えておくべきと思います。もちろんイベントとして、皆で集まってコミュニケーションをすることも大切ですが、仕事を通じての日々のコミュニケーションの活性化には、もはやオンライン抜きでは考えられないということです。チャット等を中心に、どうしたらチーム内でのコミュニケーションが活性化するか?
まだまだ当社でも実験中ですが、諦めずにアイデアを出して、トライ&エラーしていかないといけないと思っています。

5.勤務時間内

 昔は(今日は、昔話が多い気がする)「飲み二ケーション」などと言い、飲み会が非公式の社内交流の場でした。今でももちろん、そうした光景を目にすることはありますが、「飲み二ケーション」を前提に社内コミュニケーション活性化を期待してはマズイとも思います。
なぜなら、働き方改革、ワークライフバランス等の推進によって、会社と個人の距離感は、以前とは比べ物にならないくらい、ドライになってきているような気がするからです。

さすがに現代では、日本の高度成長期にあった空気感(会社の仲間=家族)はないと思いますが、ちょっと前までの従業員からみた会社との精神的距離感と、今のその距離感は、さらにドライな方向に変化しているようにも思えます。異論反論あるとは思いますが個人的には、副業OKの会社が増えてきた頃から、少しこうした変化が始まっているような気がしています。

 変化の度合いは、私個人の感覚かもしれませんが、それでもコミュニケーション活性化施策を業務時間外で全て行おうとするのは無理があると思います。前述の通り、社内コミュニケーション活性化に協力するのも、業務の一貫、組織的な目的あっての行動と理解して、コミュニケーション時間は勤務時間としておくと良いかと思います。

程度問題だとは思いますが、社員同士のちょっとした仕事以外の「おしゃべり」くらいだったら、上司は仕事しろー!って言う前に、コミュニケーションとれてるな!くらいで喜んでおくほうが正解なのだと思います。

6.発信、発信また発信

 コミュニケーションは待っていても起こりません。リーダーが率先して情報発信しなければ、絶対に起こりません。何でも良いのですが。共通の話題が必要です。仕事のこと、仕事以外のこと、リーダーは、積極的に情報発信して、ネタへの反応を待つことが大切です。反応してくれた意見を大切に盛り上げていけば、社内の空気も変わります。

 社内のコミュニケーションと社会問題とは違いますが、参考になる動画を以下に記載しておきます。リーダーは、発信した情報に反応してくれた2人目を大切にしてあげてください。

7.強制なし

 私も間違って、ついつい、やってしまいますが、コミュニケーションをとるためのルールを作ってしまうことがあります。これは間違いです。

 北風と太陽みたいな話ですが、強制されたコミュニケーションは絶対に長続きしません。自発的なコミュニケーションを促していかないと成功しません。会議で強制的に全員からの発言を求めても、最後はシラケてしまうだけです。リーダーは、チーム内から、なかなか発言が出てこないイライラを感じていることはあると思いますが、絶対にルールで縛ってはいけません。

そもそも、今回のお話は【人材定着】のための社内交流ですから、強制して良いはずがありません。強制(やらされ感)されれば、退職者が出てしまいます。

退職者減らしたい → 社内コミュニケーション活性化するべき → ルール化 → 退職者減らない という悪循環にならないように、じっくりと自発的なコミュニケーションが出てくるまで、トライ&エラーを繰り返す必要があります。

8.上司部下

 最も退職リスクを生みやすいのは、上司と部下の人間関係です。家族になれとは言いませんが、できるだけ良好な関係でいて欲しいです。上司は、部下を知る必要があり、部下は上司に自分は理解されていると安心してもらう必要があります。心理的安心がないと、ちょっとしたことで互いに疑念が生まれやすくなり、退職リスクを高めてしまいます。

上司部下の関係ついては、長くもなりますので、別の機会にしたいと思いますが、今回のコミュニケーションをテーマにすれば、1on1のミーティングは効果的です。
しかし、注意して欲しいことは、ここで言う1on1のミーティングは、タスク確認の場ではないということです。

上司: 『あの案件はどうなっている』
部下: 『すみません。まだ手つかずです。急いで対応します。』
上司: 『で、いつまでに?』

みたいな話は、別の会議で話して欲しく、ここでは、本当にお互いの生活や心情、趣味、人生の目標、最近楽しかったこと、などなどを話し合う場として設定しておくと良いです。

名称未設定 1

参考までに、上記のようなシートを使っても良いと思います。なんとなく互いに恥ずかしく、あるいはプライバシーに係ることなので、家族のことなど聞きにくいということもあるとは思います。ですから、これも強制はせずに、あくまでも書き手の自由に任せるという前提のもと、少しづつでもお互いの理解を深めていくことを意識してもらえると良いと思います。

まとめ

 そろそろ6,000字に近づいてきましたので、もう終わりにしたいと思います。社内コミュニケーションについて、いかがでしたでしょうか? 時代も価値観も変わり、今までのやり方はあまり通用しなくなってきていると思います。でも、同時に社内交流の重要性は増してきていると思います。
結局のところ、一緒に働く仲間が好きなら、なかなかその職場を離れたくないものです。

 経営者として、あるいはリーダーとして、従業員のそうした心理を狙っていくのはイヤラシイので、それはあくまでも結果論としておいていただきながら、それでも働きやすい環境整備という観点で、リーダーは自ら社内コミュニケーションを率先していくべきとご理解いただければ嬉しいです。

 前述にもあるように、リモートワークを前提に、オンラインツールなどへの理解も進めながら、ぜひ、トライ&エラーをしていって欲しいと思います。ちなみに当社の場合、プロフェッショナル人材の烏合の集まりみたいな組織のため、ぜんぜん社内のコミュニケーションが闊達ではありませんが、それでも日々、トライ&エラーは繰り返しているので、みなさんも、ぜひ諦めずに、小さなことからでも続けていって欲しいと思います。
 当社での小さな実験結果や成功事例なども、また追って共有できればと思っています。

仲間意識が強い組織では、人は辞めない。

長々と書いてきましたが、一言でいえば、上記のことをお伝えしたく、同時に、これは不変の事実だと思っています。

本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。
では、また次回をお楽しみに。

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