サッカークラブで働くために身に付けるべきスキルとは?
よく若い方から「サッカークラブで働くためにどんなスキルが必要ですか?」「今の内にやっておいた方がいいものは何ですか?」という質問を受けることが多くなったので、ここに私が考える必要なスキルってものを改めて書いておきたいと思います。
以前こんなnoteも書いてますが、この時よりは一歩考えを進められているようにも感じます。
この中では総括的なスポーツビジネスにおけるスキルについてまとめようとしてうまくまとめられませんでしたが、そもそも総括的なスキルという視点が間違っていたのかもしれません。
サッカークラブはただの「事業会社」です
サッカークラブで働きたいのでillastratorやphotoshopを学んでます
スポーツマネジメントの勉強をしています
マーケティングの勉強をしています
トレーナーの勉強をしています
・・・
などと言われることがあるのですが、サッカークラブはただの「事業会社」ですので、まずは普通に会社員として働くことが前提にあります。
「スポーツマネジメント」はスポーツビジネス経営の単なる「いろは」の知識なだけであり、スポーツマネジメントを学んだ人が即経営者になるわけではありません(なれる人ももちろんいますが)。
また、マーケティング≠スポーツビジネス、デジタルマーケティング≠スポーツビジネスです。特にマーケティング機能に関しては、ほとんどのサッカークラブでそれ単体の組織機能を持っているところはないように思います。マーケティングの機能はどの企業においてもあくまで「戦略」的立場であり、そこに専属の人的リソースをあてがうというのは財務的余裕のあるクラブ、もしくは明確に事業戦略をもっているクラブにしかできない技です。
新卒採用における、いわゆる「総合職」採用もありません。
なので、まず会社員として働ける基礎的なスキルが前提にあって、そのうえでそれぞれの職務機能に特化したスキルが求められます。
1.ビジネスサイド
サッカーのビジネスサイドから上がる売上は主にスポンサー、チケット、グッズです。
スポンサー営業
チケット営業・チケット管理
グッズ企画・グッズ販売運営
その他にファンクラブ等を運営しているのであれば、そこに運営する人が存在しています。
マーケティング単体で組織組成できているクラブは一部でしょう。
ビジネスの管理運営サイドから見てみると、通常会社と同様に
経理、財務、人事、総務、法務、広報
等の機能があり、そのスキルを持った人があてがわれています。
ちなみに広報≠マーケティングです。サッカークラブの特徴として、クラブリリースをよく出しますし、クラブとしての情報発信を行うので、機能として混ぜて見られがちですが、明確に役割が違います。
ただ、リリースという行為の観点から、広報とマーケティング機能が同居している状態になっていることは事実としてあるかと思います。
あとは、試合運営です。これがサッカークラブ運営会社の特殊な業務の1つです。試合開催における自治体・警察・消防との折衝や、安全性・セキュリティの確保、リーグ規定の熟知等、かなり専門性の高い職種です。
サッカークラブのビジネスサイドで働きたい人は、上記のような会社機能を理解したうえで、「自分自身がサッカークラブで何をしたいのか」を定義し、必要なスキルセットを獲得してもらうのが良いかと思います。
しかし、ビッグクラブならまだしも、たいていの中小クラブは上記にある機能を一人が複数兼務していることも多いため、椅子は多くありません。
ビジネスの特性上、毎年漸増的に売上が拡大していくわけではないので、人事計画として毎年人を獲得するようなことも起こりません。
そこにクラブ内の事業戦略が無ければ、基本は欠員が出た場合の補填的人事となるので、その職務機能にあったスキルを持った人を雇うことになります。
自分がサッカークラブで何がしたいのかを考えてスキルを獲得してもらうのがよいでしょう。
2.スポーツサイド
これはチーム運営の話ですが、主に下記のような組織体が存在しています。
強化部
スカウト
監督・コーチ
メディカル
フィジオ
チームマネージャー
ホペイロ
ユース
スクール
グリーンキーパー
選手
・・・
当たりが基本的なものでしょうか。組織デザインはそれぞれのクラブの特徴が現れるところなので、一概には言えません。いわゆる「クラブ哲学」がもっとも反映されるのがこのスポーツサイドの組織図ではないでしょうか。
こちらの特徴として、ほとんどのスタッフは「正社員」ではなく「プロ契約=自営業者(または会社経営)」の方々になります。
つまり、社員と違ってより専門性の高い職能が求められることになります。その職能をこなすスキルを持っていることが前提にあって、会社の中でスペシャリストとしての役割期待を受けていることが多いのではないでしょうか。
こちらでキャリアを積みたい方々は、前提となるスキルの習得、並びにいかにそのキャリアを始めて、その中でステップアップをしていくか、という視点が大きいように感じます。
入口だけでなく出口が必要
このツイートを書いてから改めて頭に浮かんだこととして、入った後のキャリアの出口を今後は業界としても考えていく必要があるのではないか?ということです。
このスポーツ庁案件の他にも、パーソルさんのスポーツ人材専門ページやHALFTIMEさんのようなスポーツ人材特化型の就職斡旋サービスも近年多くなってきました。
これはスポーツ業界における人事課題の解消の為に、他業界からの人の流入を促進することから起こっていますが、スポーツビジネス自体は漸増的に売上が拡大していくビジネスではないため、定期的な人事採用や増員が難しくなっています。
そのため、入口を大きくしても業界の人材流動性が低ければ結局のところ人の流れが詰まってしまいます。スポーツビジネス後のキャリアを中にいる人間が構築していき、その事例やノウハウを日本のスポーツ業界全体で蓄積していくことが必要になってくるなと感じています。
結論
これからサッカークラブやスポーツ運営会社を目指したい方々には、「自分がサッカークラブ(スポーツ運営会社)で何を成し遂げたいのか」をまずは考えてもらって、そこから逆算する形で職務機能におけるスキルを身に付けてもらうのがいいのではないかと思います。
これは新卒でサッカークラブ(スポーツ運営会社)を志望する人にも同様で、会社内でどんな「付加価値」を見せれるのか?そしてそれがクラブ側の必要人事要件と合っているかどうか?を考えてもらえると良いかもしれません。
とさらっと言ってますが、それは非常に高度で難しいことなので、インターンシップ等を活用して中での働きを学び、もし貢献できる力を認められれば、もしかしたら採用に踏み切るクラブも出てくるかもしれないですね。そもそも新卒募集をほぼしていないので、「採用してもいい」と思わせる働きをアピールする場所に飛び込むことがまずは必要かもしれません。
そして、スポーツビジネス後のキャリアを見据えて他の会社や業界でも通じる力を自ら獲得していく努力が必要となるでしょう。サッカークラブ(スポーツ運営会社)はキャリアの終着点ではないはずです。
サッカークラブ(スポーツ運営会社)では、あくまで任せた仕事でパフォーマンスしてもらう事を前提にしているので、そこに教育的観点はなかなか持たせにくい状況にあります。逆に、経営側としては人事としての教育機能を培う必要はもちろんあるでしょう。長期に渡り地域に生き続けるクラブとして人材の育成は必要です。
今回はこのくらいにしておいて、また考えが進んだところで書いていきたいと思います。
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