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米国博士課程のお金事情

米国の博士課程にはStipendと呼ばれる給料($25,000-40,000/年)が大学のプログラムや所属のラボから支給されるのは有名な話です。Vanderbilt大学ではサービスフリーで$365,000/年が支給され、さらに専用のオフィスが準備され、研究に必要な物品やカンファレンスや研修のための旅費はすべてカバーされます。大学によってはStipendがResearch assistant(RA)やTeaching assistant(TA)ベースのところもありますが、基本的に労働時間は短く、勉学に支障が出ないよう配慮されています。さらに、医療保険や授業料は無料となる場合がほとんどです。

これは米国だけの特殊な制度ではなく、ヨーロッパでも同様の給料制度があります。UK Research and Innovationの調査によれば、驚くべきことに、ノルウェー、デンマーク、スイスでは平均で$55,000もの給料が支給されているのです。日本とはだいぶ状況が異なりますね。

米国の博士課程の学生の多くは、給付型の奨学金やフェローシップ、研究助成金に採択されており、その結果、年間で$60,000-70,000程度もらっている人が普通にいます。また、副業を持つ人も多くいます。

しかし、インフレの影響で、これだけの資金を持っていても生活は厳しいです。私自身、妻と3人の子供を連れているので、子供のDaycareやKindergartenの費用(1人あたり$1,000/月)、さらには住人トラブルを避けるために広い家に住むことが義務付けられ、高い家賃($3,200)を支払わなければならないのです。

テネシー州のナッシュビルは州都で物価が非常に高いですが、ボストンやニューヨークはさらに高いです。ボストンのDaycareは週2回預けるだけで$2,000/月と聞いたことがあります。Natureも米国の博士課程の学生の貧困を問題視しています。実際に、生活費が最低限の必要額を下回る給料しか支給されていない大学も米国にはそれなりに存在します。

私からのアドバイスとして、入学前に以下の点についてラボや大学に問い合わせておくことを強くお勧めします:

  • Stipendの額

  • 要求されるサービス(TAまたはRA)の程度

  • 給付型の奨学金との併用可能性(Top-offなのか、Top-upなのか)

  • 家族に対する福利厚生

米国ではTop-offとTop-upの2つのタイプのStipendが存在します。Top-off stipendとは、大学からのstipend以外からの資金提供を優先し、その後大学の規定額までを大学が補填する形態を指します。この制度は最悪なものと言えますので、注意が必要です。例えば、フルブライト奨学金を獲得しても、結局のところ自分の懐に残るお金はなく、すべて大学に吸収されてしまいます。余談ですが、日本人のポスドクの多くはこの形で契約を結んでおり、日本から支給される奨学金が大学側に吸収されているケースが少なくありません。

一方、Top-up stipendは、大学の支給額に奨学金を完全に上乗せできる制度を指します。実際には、Top-offとTop-upの間に位置することもあり、交渉次第となる場合があります。これらの制度は大学ごと、またはラボごとに異なる場合があります。Vanderbilt大学はラボごとに決まるため、学生によっては収入が2倍近く変わることもあります。

家族に対する福利厚生もラボや大学によって大きく異なります。子供のKindergartenやDaycareが割引になる場合や、家族全員の医療保険をカバーしてくれる場合など、さまざまです。したがって、ここにも交渉の余地があります。

留学生にとってはさらに困難が伴います。市民権の問題から、National Institutes of Health(NIH)の研究助成金にはほぼ応募できません。さらにビザの規定により、キャンパス外での副業が許可されていない場合がほとんどです。金銭面での不安は学業のパフォーマンスにも影響を及ぼします。なので、留学を検討している方は、賢い選択をするようにお勧めします。具体的な例を挙げることは控えますが、意外とアウトすれすれのことを行っている人を見かけることもあります。

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