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干した蕪ってほんと美味しいよね

仕事終わりが22時をまわる日が2日続いて「あまり遅くまで頑張りすぎないでくださいね!」と社長からの労りLINEが来た。シャッチョサンそのまんま返すわあ〜!と思ったけれど送らなかった。

師走です。

カラッとした日差しはこの先そうは続かないからねと、お天道様から告知されてる気になって、この機を逃すまいと道の駅で買ってきた蕪を干した。季節モノのこの時期だけ出回っているでっかくてごっつい蕪だ。

私は蕪の漬物が大好きだ。しかもそのまま漬けたやつよりも、干して少し水分の抜けた、ゴリゴリと歯応えのある固めのやつ。

全く面倒くさくないと言ったら嘘になるけれど、その分美味しいからね。早速洗って四つ割に切って干した。余っていた白菜やセロリも、どう使うかは決めていなかったけれど、旨み凝縮干し野菜万歳!一緒に綺麗に並べて干した。

その並べ方は几帳面でとても綺麗。この領域には雑な者、土足で踏み込むべからず。

お天道様を浴びた蕪は日に日に思い描いた姿に萎んでいった。出来上がりを想像してうほうほのうほで見ていた。さて漬けましょうと意気込んだその時、蕪だけがなくなっていた。

「蕪知らない?」

と母に聞くと、

「毎日忙しそうだからやっておけば喜ぶと思って漬けておいたよ。」と言われた。

出た〜〜〜。全く余計な事をしてくれる。私がやりたいようにやりたかったのに。好きな加減になるように育てていたのに。お醤油じゃなくて塩麹に漬けるつもりだったのに。

柿の種を一粒ずつ食べる私の蕪に、ホールケーキめがけて冷蔵庫に直接フォークを突っ込んで食べる母が、断りなしに手を出した。

『喜ぶと思って〇〇しておいた』は、おそらく全母親に共通する常套句で、世の母親はこれを武器にしている。
しかし子供側からすれば母親からの迷惑行為TOP3に君臨している。
この攻防戦は早い時点で折れないと、どこまでも平行線でおかしな事になる。嫌いだ、嫌いだ、嫌いだ。

人の蕪漬けるよりも他にやる事いっぱいあるだろ!!!と、腹を立てていたのは3、4日前の話。

今朝、お弁当の用意をしながら、朝ごはんに雑炊を作った。適当な野菜を切って、焼いたベーコンを入れて、塩と即席の出汁でぐつぐつとさせ最後に溶かし卵とネギを入れれば完成。

起きてきたら雑炊ができている冬の食卓は幸せだ。これに蕪の漬物と塩昆布でもあれば、まるごと1日ハッピーで過ごせそう。

勝手に漬けられた数日前の怒りも忘れ、漬けてもらった蕪を出そうと冷蔵庫を探した。

ん、見当たらない…。


「ねえ、漬けてくれた蕪どこ?」と聞くと、

「美味しく食べたよ。」と言われた。

?!?!?!?!

「喜ぶと思って漬けておいたって言ってたよね?」

「うん!」

「誰が喜ぶと思って漬けたの?」

「蕪が。」

「え?!?」





「蕪が喜ぶと思った。」




斜め上をいく切り札を出してきた母に、言い返す言葉も失った私は、竹中直人で家を出てきた。

日差しは今日も暖かい。


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