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【ハロウィン読書】ケルト 再生の思想 - ハロウィンからの生命循環

去年のクリスマス前にクリスマス文化についての本を読みました。イベントの前にその歴史に触れる。読書好きとしては最高の季節の楽しみ方だと思いませんか?

そして、来たるハロウィン。10月の半ばには買っておいたご時間が取れず、ハロウィン当日に読み終えました。

今年は終わってしまいますが、ハロウィンを楽しむ上でとても興味深い内容の一冊だったので、簡単に紹介します。

ハロウィンのルーツ

まず、ハロウィンの起源はケルト文化にあります。ケルトとは紀元前400年ごろにヨーロッパに住んでいた民族、またその文化です。

ケルトの人たちは1年を4つの季節に分けて考えており、それぞれの季節の変わり目に祭りが行われました。

11月1日の「サウィン」
2月1日の「インボルク」
5月1日の「ベルティネ」
8月1日の「ルーサナ」

そして、ケルトでは11月1日の「サウィン」が1年のはじまりでした。サウィンは前夜、10月31日から始まります。これが現在の「ハロウィン」の原型となったものです。

あの世とこの世が繋がる夜

ケルトでは季節を4つに分けて考えられていましたが、さらにサウィンからベルティネまでを闇の半年ベルティネからサウィンまでを「光の半年」を分けていました。

サウィンは厳しい冬の始まりでもあります。寒冷なヨーロッパ地域のうまく冬は作物も育たず、家畜を食料にするために屠殺しなければいけない。冬の始まりであると同時に、文字どおり「死」が近づく季節なのです。

光の半年と闇の半年が反転するハロウィン・サウィンは、古い時と新しい時が混ざり合い、ふだん生と死を隔てている壁が破られる。

「あの世とこの世」が繋がり、祖先や友人などの霊がこの世に戻ってくると信じられていました。その霊を家に招き入れてもてなすお祭りでもあります。日本のお盆に少し似ていますね。

仮装と「トリックオアトリート」

ハロウィンといえば仮装。そして「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ」。これもサウィンの死生観に由来します。

日本では大人の仮装イベントのイメージが強いですが、ヨーロッパやアメリカでは子供たちが仮装して家々を訪ね歩き「トリックオアトリート!」と言ってお菓子を貰う慣わしは今でも盛んに行われているそうです。

ハロウィンの夜は、霊をもてなすためにお菓子を作って供えました。大切な食料である小麦粉で作った焼いたお菓子は「霊魂のお菓子(ソウル・ケーキ)」と呼ばれます。

ソウルケーキ。十字架模様が特徴。

子供たちが仮装しながら「トリックオアトリート!」と元気に叫ぶのは、この世に帰ってきた霊たちの代理のようなものです。

「もし生者が死者や祖先をもてなすことを忘れ、供養することを怠るなら、霊たちは怒り、邪悪なことをするぞ!」というけっこう怖い言葉なんですね。

なぜ子供なのかというと、彼らが大人よりも純粋な心の持ち主だから、霊魂の化身に相応しい、ということだとか。そのとおりですね。

ジャック・オ・ランタン

ハロウィンといえばカボチャも思い浮かびます。カボチャを顔の形にくりぬいた「ジャック・オ・ランタン」は、男が成仏できずに悪魔からもらった火を灯して彷徨っていたというブリテン諸島の伝承に由来します。

ケルトではそういった死者を嫌うことなく、成仏できる道を照らす灯りとしてランタンを作ったそう。実はカボチャが使われるのは19世紀にアメリカに広まってからで、それ以前は白カブを使っていたんだそう。その写真がこちら。

上がカブで下がカボチャ

うーん、めちゃくちゃ怖い。

感想

ハロウィンは現在ではハッピーなお祭りというイメージですが、先人たちが厳しい大地を生き延びるための知恵の集積なんですね。読んでいて「冷蔵庫も暖房も無い時代、冬はそりゃあ過酷だよな……」と改めて思いました。

当たり前に生活に根付いてる風習の歴史や由来を学ぶのはとても楽しいです。毎年恒例のイベントは、その度に学んだ知識を思い出して楽しむことができる。知識としてめちゃくちゃコスパ良くないですか?

もうハロウィンは終わってしまいますが、いちおう本のリンクを貼っておきます。ぜひ来年、再来年、そのまた先のハロウィンを楽しむために。



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