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至福と不穏の空気


よっこらせと湯船の縁に腰を掛けてnoteを更新していなかった日々を思い出している。まず思い出せるのは空気。
私は昔から空気に敏感だ。それを読み切れないと生きてゆけぬような実家生活だったからか、特に不穏な空気を読むのに長けている、と思う。
ここ1,2週間は空気の収縮と緩和が著しくて気持ちがどうも休まらない。ピリピリと肌につくような空気が続いては内側から暴発しそうなストレスで苛立ちまくり、さらに不穏な空気を発するという悪循環。職場にいると少しは抑えられるからか最近ちょっと残業したりして、家にいる時間を自分なりに少なくしていた。

そんな日々の鬱屈さは解決に向かいつつあり、暴発しそうなストレスは縮まっていっている。緩和された空気では上滑りしていた目も冴えて、食後の至福読書時間に勤しめている。


最近読んでいたのは『じゃむパンの日』『乙女の密告』。
どちらも赤染晶子さんの作品で、『じゃむパンの日』はエッセイ。このエッセイ、どこをめくっても面白いという強者。馴染みのある京都の話が出てきたり、北海道の話が出てきたり、はたまた交換日記があったりとボリューム満点で、エッセイというより一種の漫才を見ているかのようで笑いが止まらなくなる。くすくす笑う日々が欲しい人は読むべし。

そんなチャーミングエッセイを書く赤染晶子さんが芥川賞受賞した『乙女の密告』は外大の女子大学生が主人公。スピーチコンテストで『アンネの日記』を暗唱することもあって、『アンネの日記』がものすごく出てくる(読まねば)。
アンネが隠れ潜む日々と外大に通う乙女たち(女子大学生)の噂によって孤立した女子がリンクしたり、私たちが見えていなかった【他者】が認識できるようになってきたりする。もっと私に読み解く力があればと思う作品で、こんなふにゃふにゃ復帰したて読書脳では到底太刀打ちできない。私の薄目と同じくらいの幅しかないのにもかかわらず、読むと膨大な書物を読んでいるかのよう。文章は読みやすいのに、いつの間にか私の頭はフル回転して、乙女たちを通して秘められた内なる思いを読み取ろうと必死だったが読み終わった今は表層しか掴めていないような気がする。いつかリベンジだなと思いながら本棚であたためている。


今はのほほんと小川糸さんの『糸暦』をお供に。美味しそうなご飯、纏う着物のお話が書かれていて、心がほっとする。いつのまにやら私が持っていない『とわの庭』が文庫化するようでとても楽しみに待っている。そういえば『ライオンのおやつ』から単行本購入できてなかったかもしれない。情報の渦に飲み込まれるのが嫌で、だいたい閉鎖しがちだし、読書も人が読むよりゆっくりの速度で手に取ったりするけど、それはそれで自分らしいか。ではまたいつか。




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