気になったニュース#29 【ロボットの売り子はトップ営業マン?】 2022.5.9
サイバーエージェントと大阪大学が、人が遠隔操作する接客ロボットを小売店や保育園に導入しているとのことです。
実際にパン屋で導入された例では、ロボットがおすすめのパンを紹介する「売り子」をしているそうです。
客の来店を検知し、声を拾って自動で顔を向ける、手を振るといったことはAIが行っているそうですが、顧客の様子を観察しパンのおすすめをするのは遠隔操作をしている人が担当しているのだそうです。
記事によると、人だけで接客した場合に比べて6種類のパンを約2倍売ったとのことです。今はまだ物珍しさがあるのかもしれませんが、生身の店員からおすすめされるのに比べ、押しつけがましく感じないという理由もあるのかもしれません。
機械学習の発達により、AIという言葉がより身近なものになりました。
とはいえ現状では本来的な意味でのArtificial Intelligence、すなわち人工知能と呼ぶにはまだまだ乗り越えるべき壁が多く、実用面においても「知性」と呼べるような柔軟さをコンピューターは持てないでいます。
パン屋さんの売り子の例においても、来店客の様子や表情・行動などを読み取りおすすめのパンを選ぶことにおいては読み取るべき変数があまりにも多すぎるため、今のところ人間に軍配が上がるということなのでしょう。
それならば人間の店員を置けばよい、ということになるかというとそうでもなく、一人の人間がおよそ5体のロボットを管理できるので効率が良いのだそうです。
また人間が遠隔操作でロボットを操ることのメリットは他にもあります。
例えば、単純労働のゲーミフィケーションです。
Gamifyとは「ゲーム化させる」という意味で、本来ゲームとは無関係の分野において、ゲーム的な要素を持たせることを指します。
単純労働をGamifyするということは、単調な作業にゲーム性を取り入れることです。
延々と続く単調な流れ作業であっても、例えばスマホからロボットを遠隔操作することができ、その作業がゲームをする操作感覚でできるようになっていたり、またランキングでの競争やクリア報奨などが設定されていれば、ユーザーは労働ではなく遊びとして夢中になって取り組むかもしれません。
また遠隔操作をすることで、人間の代わりにロボットが危険な作業を代わってくれるというメリットもあります。
災害の救助活動や、人が足を踏み入れることができない領域の調査活動などはすでに実用化されていますが、ロボットの技術が上がればさらに活躍していくでしょう。
JR西日本では、下記のような人型重機ロボットを開発しているようです
(かっこよすぎる!)。
また、恐ろしい話ですが軍事利用も当然されてきています。
すでにドローン等の無人機を使った爆撃機や、遠隔操作の戦車なども実戦で活用されています。
上記のような記事を読むと、『マージナル・オペレーション』というフィクション小説を思い出します。
ゲーム系の専門学校を卒業した主人公は就職先を見つけるのに苦労したすえ、民間の軍事会社に採用されます。
そこで研修として戦術シミュレーションゲームのようなものをやらされるのですが、そのゲームにおいて意外な才能を発揮します。しかしのちになって、そのシミュレーションゲームは実は模擬訓練などではなく、戦争地域で実際に行われている軍事作戦であったことを知る、というあらすじです。
このような世界観がすでに現実のものであると考えると恐ろしいばかりですが、単純作業のゲーム化や災害の救助活動のためにロボットが活躍するというのは、とてもわくわくするようなことだと思います。