『虎に翼』第5週感想 ~大きな音も暴力~
2024年4月期の朝ドラ『虎に翼』、私も毎日楽しみに見ています。
あくまで、私個人の体験や生活に引き寄せての感想なので、その点をご了承ください。
第5週目の感想です。(放送後、毎週翌火曜ごろまでには公開しています。ネタバレを含みますのでご了承ください)
第5週のあらすじ・公式ダイジェスト動画は、下記のリンクからどうぞ。
政治スキャンダルの裁判がメインの第5週
第5週は、主人公寅子の父で銀行勤めの「直言」も嫌疑をかけられた、贈収賄事件の裁判を中心に進んだ週だった。
これまでの学生たちの青春群像劇の要素も残しつつ、証拠と検証を積み上げての裁判の成り行きは、ドキドキハラハラしながら見守った。
「無罪」の判決が出たときには思わず声を上げて喜んでしまった。
これは、実際に昭和初期に起きた【帝人事件】をもとにしているそうで、登場人物たちの当時の新聞記事への「寄せ方」も、SNSでは賛辞が多かった印象だ。
実際の帝人事件については、時代背景を含めた解説記事をみつけたので、参考としてリンクを載せておく。
検察の自白強要
私が第5週で一番印象に残ったのは、裁判が開始して間もないときに、法廷で担当検事に向かって発せられた直言のセリフだ。
この言葉が発せられる直前まで、直言はたとえ無実でも罪を認めて早く裁判を終わらせるつもりだった。
予審を終えて帰宅して以降の父は、第4週までに描かれてきた、これまでのほんわかノホホンとした暖かい空気をまとった人物とは別人のようだった。ふさぎ込んでいて、はじめは家族にも無実であることを認めなかった。
弁護士の穂高から問われると、「二度とあそこには戻りたくない」と弱々しく語る。その時に検察の取り調べの回想が映し出される。
取調室で検事が威圧的に大声を出しながら、扇子を手や机にたたきつける。時には机も揺れて大きな音が出る。そして、革手錠で拘束されて独房のような場所でうなされている直言の様子だ。
暴力とは、強要とは
実際の帝人事件の際にどうだったかまでは、私は詳しく知らないが、「革手錠」での拘束については帝人事件でも新聞沙汰になっていたようで、不必要な拘束は当時も問題視されたようだ。
しかし、今回のドラマ上誰もが想像するようなわかりやすい拷問や、身体的暴力は描かれなかった。「朝ドラ」ということもあるかもしれないが、大きな音と大声に長時間さらして拘束することが、十分「暴力」で「強要」であることを映像上も描けていたと感じた。(検事役の堀部圭亮さんの迫真の演技と素晴らしい演出もあってこそなのは言うまでもないが)
なお、内閣府・男女共同参画局によると、「暴力」のなかには「大声で怒鳴る」も含まれている。
また、GW直前の4月下旬に話題になったばかりの東京都のカスタマーハラスメント対策の条例化のニュース。ここでも、「威圧的言動」はハラスメントに含まれる方針とされている。
つまり、肉体的に直接叩かなくても、大声で脅しながら目の前で扇子を大きな音を立てて打ち続けるのは十分に「暴力」といえる。
実際に、ドラマ内の直言は、一時は検事の姿を見ただけで扇子の音を思い出し、PTSDにも似た症状で倒れこんで休廷になっている。
直言が法廷で、決意したように罪状を否認した後、なおも大声を出す検事に向かって、「扇子をたたくのをやめてくれ」と大声で言えたことは、直言自身が自分を取り戻し、あれは暴力だったと認めることができた言葉のように思えて、私にとっては判決の場面よりもスッキリ感があった。
あの瞬間から第4週までの直言が帰ってきた。
なぜか、「体罰」には大声が含まれていない?
今週は、このテーマで感想を書こうと思って、実は「体罰」の定義についても軽くネットで調べてみたが、「大声で怒鳴る」「物音を立てて脅す」という行為は明確には含まれていないようだった。(詳しく探せばあるのかもしれないし、解釈の要素もあると思うが、公的サイトでも明確に書いてあるものは見つけられなかった)
大人に対して「暴力」「ハラスメント」と定義づけられているものが、なぜ子どもに対しての教育現場でのみ「あり」または「グレー」になっているのか。個人的には問題だと感じた。「虐待」にも「怒鳴る」や「けなす」が含まれると考えられる場合が多いのに、学校の「体罰」だけが、もし本当にそれを「あり」としているのであれば、改善されてほしいと思う。
すでに放送中の、第6週の予告は下記のリンクから。
アイキャッチ画像:(UnsplashのBlake Meyerが撮影した写真)
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