「子どもについて」

赤ん坊を抱いたひとりの女が言った。

どうぞ子どもたちの話をして下さい。

それで彼は言った。

あなたがたの子どもたちは

あなたがたのものではない。

彼らは生命そのもの

あこがれの息子や娘である。

彼らはあなたがたを通して生まれてくるけれども

あなたがたから生じたものではない。

彼らはあなたがたと共にあるけれども

あなたがたの所有物ではない。

あなたがたは彼らに愛情を与えうるが

あなたがたの考えを与えることはできない。

なぜなら彼らは自分自身の考えを持っているから。

あなたがたは彼らのからだを宿すことはできるが

彼らの魂を宿すことはできない。

なぜなら彼らの魂は明日の家に住んでおり、

あなたがたはその家を夢にさえ訪れられないから。

あなたがたは彼らのようになろうと努めうるが、

彼らに自分のようにならせようとしてはならない。

なぜなら生命はうしろは退くことはなく

いつまでも昨日のところに

うろうろ ぐずぐず してはいないのだ。

あなたがたは弓のようなもの、

その弓からあなたがたの子どもたちは

生きた弓のように射られて 前へ放たれる。

射る者は永遠の道の上に的をみさだめて

力いっぱいあなたがたの身をしなわせ

その矢が速く遠くとび行くように力をつくす。

射る者の手によって

身をしなわせられるのをよろこびなさい。

射る者はとび行く矢を愛するのと同じように

じっとしている弓をも愛しているのだから。

(ジブラーン 詩集『予言者』(神谷美恵子 訳)より)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?