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連載エッセイ「弱い自分」第14回「心がパーンとなった日」

自分は精神的にそんなに弱くはない。
嫌なことがあったらとにかく逃げ続けていた人間だ。放送作家時代でも一回心がパーンとなったことがあった。

それは人手が足りないという理由で某ゴールデン番組のリサーチを期間限定でやることになった時のこと。
やる前からかなりきつい内容であることを耳にしていたため、覚悟を決めて挑んだ。
この番組のリサーチはいわば「あの人は今」。かつてテレビに出ていた有名人がある時期を境にメディアから消えた。その人の今を調べるというもの。

何がきついかというとネットでは限界であったからだ。そんなの情報があるわけなく見つけたとしても古い情報なのであまり意味がない。そんな人たちをネット以外でどう探せばいいのやら。
何度も送っても差し替え、差し替え、差し替え。
おまけに班長の厳しい指摘の連続にだんだん心が病んでいった。
そして何十回差し替えをした時に班長から「もう1回差し替え!」という強い文面を見た自分は「パーーーーーン」と心のどこかで破裂する音が聞こえた。

自分は頭が真っ白になり、仕事そっちのけで車でどこか遠くへドライブしていた。
別に楽しく運転しているわけでもなく、無表情で気が付けば大宮まで運転していた。
目的地に到着してもただ無表情でそこら辺のお店を散策しているだけでそのまま自宅に帰った。

家に帰ってもただぼーっとしているだけ。
スマホなんか見ずにただテレビを見ているだけ。お笑い番組を見ても無表情でも続け、お風呂に入っても頭の中は真っ白で何も考えず、そのまま寝た。

朝になっても変わらずスマホを見ずにただぼーっとしていた。それが1日続いた。
そしてなんとか精神が取り戻した自分は恐る恐るLINEを見た。
怒られると思いきやそんなメッセージはなく、先輩から心配の声が多数来た。
「いつも頑張っているから少し休んだほうがいい」、「いつも助かっている」などの声をもらって自分は少し嬉しかった。

数日後、自分は番組担当の人に謝罪して再びその仕事をやることになった。そして数ヶ月後にその番組の仕事を終えることのなった。

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