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胸痛の鑑別〜心臓?肺?〜 『症候別解説 第2弾』【まとめ】

胸の痛み.......【胸痛】。
胸痛を感じた時、「この痛みは心臓が原因?」「大丈夫なのかな」「重い病気だったらどうしよう...」と多くの方が思うはず。

ズバリ胸の痛みを見分けるための最大のポイントは
「心臓(心血管系)」「心臓じゃないか」です。
なぜならば「心臓」が原因の胸痛は死に直結しうるからです

このnoteでは
✔︎どのような痛みの時「心臓」が原因の可能性が高いか
✔︎逆にどのような痛みならば「心臓」でない可能性が高いか
✔︎胸痛の原因の考え方
✔︎胸痛をきたす代表疾患一覧

について解説していきます。



1. 心臓の痛みはなぜ起こるのか?

 『痛み』は感覚神経の興奮によってもたらされ、感覚神経は皮膚、関節、骨を包む膜などに分布しています。例えば指に針が刺さった時に痛いと感じるのは、皮膚の感覚神経が針の刺激で興奮し電気信号に変換され、脊髄(背骨の中の太い神経)を経由して大脳に到達するためです。この感覚神経を「一般体性感覚神経」といいます。
 一方、心臓や内臓にはこの一般体性感覚神経は分布しておりません。なので実を言うと、心臓に針が刺さっても腸に針が刺さっても「痛い!」とは感じないんです。
 しかし、心筋梗塞などの心臓の病気では胸が痛くなるって聞きますよね。実は心臓などの内臓にも感覚神経は分布していおります(この感覚神経を「一般臓性感覚神経」といいます)。しかしながら心臓がダメージを受けて「一般臓性感覚神経」が興奮しても、脳は「一般臓性感覚神経」と「一般体性感覚神経」のどちらが興奮したかを区別することができないんです。そのため、脳は「一般体性感覚神経」が興奮したと認識してしまい、皮膚が痛いと錯覚してしまうのです。よって心臓がダメージを受けると、心臓周囲(胸の真ん中から左寄り、みぞおち、左肩(時に右肩)、首、左の背中、顎、歯などが痛いと錯覚します。この痛みを「関連痛」といいます。後々お話ししますが、この「関連痛」を「心臓の痛み」と読み替えることができるかどうかがポイントとなります。
(さらに詳しく言うと、上述の範囲に分布する一般体性感覚神経と、心臓に分布する一般臓性感覚神経が同じレベルの脊髄に入るため、一般体性感覚神経の情報として大脳へ情報が伝達されてしまうという機序といわれています。さらに詳しく知りたい方は是非調べてみてください)。


2.胸痛の原因となる臓器を知る!!

痛みの原因を調べる際に絶対に意識する必要があるのは「解剖学」です。すなわち、その痛みがある部位にどんな臓器があるか三次元的に考えていくことが必要です。そんな難しいことを言われても...という感じかもしれないですね、すみません(笑)。でも大丈夫!詳しく解説します。

例えばみぞおちが痛いとなった時に、皆さんはどの臓器が問題だと考えますか?
『心臓?肺?もしかして胃?』

実は胸部〜みぞおちにはたくさんの臓器が存在します。具体的には心臓、肺、気管、食道、胃、横隔膜、十二指腸、胆嚢・総胆管、膵臓、大動脈などの血管...

なんと多いことでしょう。
ここに列挙した臓器のどれか異常をきたすと「胸痛」を発症することになりえるわけです。
ああ、もう無理、頭に入らない、って思った方!大丈夫です(笑)ここに列挙した臓器を皆さんに覚えていただく必要は全くありません。

ここで知っていただくポイントは1個だけです。

✔︎「胸痛」の原因は「心臓」「肺」だけでなく多彩。
 →したがってどの臓器が異常か?を考えるのは医療者でなければ困難。
 →「胸痛」をきたす代表的な疾患とその症状を知っておくことが重要!!

ということになります。

「胸痛」をきたす代表的な疾患は次の2つの軸で整理しましょう。

①「超危険な胸痛」はどんなものがあるか?
 →これを知っておくことでどんな時に医療機関を急いで受診しなければならないかが明確になります

②「胸痛」をきたす代表的疾患はどんなものがあるか?
 →頻度と症候をなんとなく知っておくことでその後の対応がしやすくなります

この2つを軸に詳しく解説していきます。↓↓


3.「超危険な胸痛」を知る!!

胸痛の恐ろしい点は、対応が遅れると命に関わる疾患が紛れ込んでいるからです。基本的に胸痛があった場合は医療機関を受診すると心得てください。その中で、次の5つの疾患を疑うポイントがあれば一刻も早く救急要請してください。

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