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浴場における男女の取扱いについて

いわゆるLGBT法が成立しましたが、この法律はまさに国全体で意見が二分しているといえます。さまざまな賛成、反対の意見が過熱しましたが、一番大きなものは、「トランスジェンダーの女性が女性浴場に入ってきたらどうするのか?」という議論だったと思います。

LGBT法は6月23日に施行されましたが、じつは同日に厚生労働省から「公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて」という通達が出されています。この点について、なぜかそれほどメディアに取り上げられておらず、ご存じない方もいらっしゃると思いますので、以下にリンクを張ります。


「公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて」(薬生衛発0623第1号 令和5年6月23日)

公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて

内容としては、「公衆浴場における衛生等管 理要領等について」(平成 12 年 12 月 15 日付け生衛発第 1811 号厚生省生活衛生局長通知)で通知している解釈を確認しているものであり、新たなルールが加えられたものではありませんが、以下のような解釈が明確に確認されている点は重要でしょう。

これらの要領でいう男女とは、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨か ら、身体的な特徴をもって判断するものであり、浴場業及び旅館業の営業者は、 例えば、体は男性、心は女性の者が女湯に入らないようにする必要がある

公衆浴場や旅館業の施設の共同浴室における男女の取扱いについて


通達では、令和5年4月28日の衆議院内閣委員会の会議録も抜粋されており、その中では以下のような政府側の答弁がされています。

佐々木政府参考人: 
 この要領で言う男女は、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、トラン スジェンダーの方も含め、身体的な特徴の性をもって判断するものであり、公衆浴 場等の営業者は、体は男性、心は女性の方が女湯に入らないようにする、こういう 必要があると考えております。

令和5年4月28日衆議院内閣委員会会議録

伊佐副大臣:
 公衆浴場における入浴者については男女を身体的な特徴の性をもって判断するというこの取扱いは、風紀の観点か ら合理的な区別であるというふうに考えられております。憲法第十四条に照らし ても差別に当たらないものというふうに考えております。

令和5年4月28日衆議院内閣委員会会議録


LGBT法では、今でも女性浴場やトイレなどをめぐる議論や論争が盛んですが、そもそもこの法律の存在によってそれらの取扱いが変わることはなく、刑法や不法侵入などによって対処すべきことはいうまでもありませんが、あらためて通達で施設管理者への周知徹底が確認されたことで、少しは平穏な機運が定まればと思います。

LGBT法への賛否はそれぞれの立場や信条などによってまちまちだと思いますが、具体的なリスクについて議論する場合は、それが明確に法律の存在によって顕在化するものなのか、時代の雰囲気によって派生的に高まるものなのかは、やはり冷静に見ていくことが大切だといえるでしょう。


そうでなければ、法律で本来カバーしている部分やしていない部分という範囲を超えて、結果的にはかえってマノリティに対する社会的な偏見が強まってしまう可能性もあり、それは法律の趣旨に反するだけでなく、国民すべてにとっても不幸なことなのだと思います。

以下の厚生労働省の「公衆浴場のページ」なども参照して、ぜひさまざまな議論や自己啓発の前提をひとりでも多くの人と冷静に共有していきたいものですね。


学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。