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【書評】フィードバックってなんだ?

こんにちは。
今回は「みんなのフィードバック大全」(著:三村真宗さん)の書評です。
まずは本書の要約をした上で、意見・感想を述べていきたいと思います。


要約

そもそもフィードバックって?

本著で述べているフィードバックとは、「職場で行った活動に対する意見・アドバイス」のことです。
後ほど詳しく説明しますが、商談がうまくいった時等にプラスのことを伝えたり、失敗した際には改善すべき点を指摘することです。
一般的に日本人はフィードバックが苦手だと言われています。人の悪いところを指摘するのは気分を悪くさせるんじゃないか、と思ってしまいますし、逆にいいことをよかったと伝えるのも、なんとなく気恥ずかしいような気がしますよね。
これは日本がハイコンテクスト文化(社会の構成員の同質性が高く、言わなくても分かり合える度合いが高い)であることによるものです。
ローコンテクスト文化の場合、それぞれの人が持つバックグラウンドが違い、持っている常識が違うことが常識です。ですので、すべて言語化し正確に伝えることが優先されます。
一方、ハイコンテクスト文化では、それぞれの持っている常識は似通っています。共有している前提条件が多い分、言葉で説明しなければならないことは減ります。
スムーズなコミュニケーションが取れるメリットがある一方で、直接的表現は嫌われる傾向にあります。そして、フィードバックはまさしくこの直接的な表現にあたるので、日本では行われにくいのです。

フィードバックが重要なわけ

時代の流れが速くなっていっています。グローバル化によるものもあるでしょうし、テクノロジーの進化によるものもあります。
昭和以前の時代であれば、一つ技術を身に着ければ、一人の人間が一生暮らす間ぐらいは陳腐化しなかったかもしれませんが、今はそういうわけにはいきません。どんどん新しいことを学んでいく必要があります。
個人が学び、成長していく上で、自分ひとりで気づき、学んでいくのと、色んな人の気づきを得て学んでいくのとでは、スピードが全然違います。そもそも自分ひとりでは気づけないこともたくさんあるでしょう。
個人の成長速度を上げる、それがフィードバックが重要な理由です。

実践!フィードバック

さて、フィードバックには2種類あります。
ポジティブフィードバックとギャップフィードバックです。

まず、ポジティブフィードバックについてですが、簡単に言えば褒めることです。ポジティブフィードバックの目的は①好ましい行動の強化、②好ましい行動への転換、③承認欲求の充足です。
また、関係性強化や心理的安全性を高めることで、のちに説明するギャップフィードバックを受け入れやすい環境をつくる効果もあります。

次にギャップフィードバックについてです。簡単に言えば、出来ていないこと・改善すべきことを指摘することです。
ギャップフィードバックの目的は、出来ていないことを指摘することで気づきを与え、どう改善するのか考えてもらうことです。
指摘するだけであれば、勇気さえ出せば簡単なことですが、相手に納得してもらって改善まで至ることは難しいことです。

ポジティブ・ギャップフィードバックを実践する上で最も大事な基本は「相手の成長を願うこと」です。
気持ちだけではうまくいきませんが、気持ちがなければどれだけ方法論を学びうまく実践できたとしても、相手の心には届かないと思います。
細かい方法論は本書を読んでいただくとして、私が一番参考になったフレームワークを紹介します。
それは、ギャップフィードバックを行う手法として紹介されていた「ソラ・アメ・カサ」のフレームワークです。
ギャップフィードバックを行う際にまず事実関係(空のこと、曇ってるとか晴れてるとか間違いない事実)の共有から行います。事実の認識に齟齬があったり、そもそも起こっていることを認識していない可能性もあるからです。
事実関係をすり合わせた次は、問題点・課題(雨)を特定します。ここからは傾聴が重要です。課題はこれだ!と突きつけるのではなく、質問しながら自身の行いが問題であることを納得してもらうことが重要です。最終的な問題点・課題は同じものに辿り着いたとしても、人から言われたのと、自分で気づいたのでは、次の行動に大きな差が出ます。
最後は打ち手(傘)です。ここも質問を繰り返しながら、自身で辿り着いてもらうことが重要です。ギャップフィードバックの目的は行動を起こして改善してもらうことです。ただ、指示をしただけでは、表面上あるいは短期的には改善したとしても心から変わることは少ないです。相手の成長を促すには、自分で気づいてもらうことが重要です。

コーチャビリティって?

ここまではどちらかと言うとフィードバックする側のお話でした。ただ、残念ながらフィードバックを行う側の信念がどれだけ崇高で、能力が高かったとしても、受け取る側が無視してしまえばなんの意味もありません。
フィードバックを受け取る能力、それがコーチャビリティです。

意見・感想

以上が、簡単な本書の要約です。上記の他に、経営者層として組織にフィードバック文化を根付かせる方法についての章もありますが、今回は割愛しました。

働き方改革って?

最近働いていて疑問に思うことがあります。世間では働き方改革が叫ばれていて、サービス残業の絶無は当然として、時間外労働自体の削減も強く求められています。
労働者としては嬉しい話ですが、一方でなんだか「働くな」と言われているような気持ちになってしまいます。
また、能力が高く時間内にちゃんと求められた仕事をやり切れる人はいいかもしれませんが、能力が低くても仕事をこなし切りたいと思っている人は、長時間働くしか解決方法がないんじゃないでしょうか?そうやって働いているうちに、徐々に能力が開発されていくもので、一律に時間外労働を削減することは成長の機会を奪うことなんじゃないでしょうか?
そんな違和感を感じていた中で本書を読みました。仕事をしていく中では、「働くのが楽になること」ももちろん大事ですが、それと同等に「働きがい」も大事です。そして、「働きがい」の一部を占めているのが、自身の成長実感です。
個人の成長を促進できるフィードバック文化を醸成していくことは、働き方改革によって奪われた成長機会を、長時間労働とは別の方法で取り戻していくことに繋がるのでは、と感じました。

飲み会で愚痴、言ってませんか?

職場の同僚や他部署の人の愚痴、飲み会で言ってませんか?私は恥ずかしながら心当たります。
でも、飲み会の愚痴=フィードバックすべきことです。どうしても、「言っても仕方ない」、「伝えたところで反感を買うだけ」と思って、言うのを我慢して飲み会で発散する、そんなことをしてしまいがちですが、相手の成長を願うなら、本人に伝えなければなんの意味もありません。もし、回りまわって愚痴が伝わりでもしてしまったら最悪です。
とはいえ、受け手のコーチャビリティがあまりに低ければ、フィードバックも効果を生みません。まずは、相手の成長を願いながら、伝え方をしっかり練って伝える。それでも受け手のコーチャビリティに問題があると思えば、飲み会でも口をつぐむ。これからは、そうして行こうと思いました。

最後に

とてもおもしろい本でしたが、実践していくことはとても難しい内容だと感じました。
まずは自分がポジティブフィードバックを増やしていくこと、次にギャップフィードバックにトライして、最終的にはフィードバック文化の醸成まで目指していきたいと思います。
ここでは語り切れなかったことがたくさんあります。少しでも興味を持たれた方は是非、本書を手に取ってみてください。
必ず勉強になると思います。
ではまた。

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