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ノマドランドの美しさと優しさ

2021年公開の映画「ノマドランド」を観た。

私にはいくつか、トゲトゲ、ギザギザした心をなめらかにするような、ワックスのような軟膏のような映画がある。具体的には、かもめ食堂や、南極料理人だったんだけれど、そこに「ノマドランド」が仲間入りした。

正直、最近まで意識的に見ないようにしていた映画でもあった。なんだか物悲しい映画のようなイメージがあって、引き摺られたら参っちゃうな〜と思ったから。

だけども、早く観ればよかった。というか、映画館で観るべきだった。まず第一にとにかく映像が美しいのだ。

アルプスの1座を登り切ったような満足感。山好きにも見て欲しいし、山に行けないときの欲求不満に効く映画でもあるような気がする。
吐いた息が冷たいような、綺麗な景色、山の朝夕や、アイスランドで見た景色を思い出させるような描写。

2019年12月 アイスランドにて

そして、主人公ファーンは私なんじゃないかと思うほど、重なる部分があった。
寂しくて、でも不幸じゃない。自らそれを選んでいる。悲しい話じゃない、ひもじい話じゃない。とにかく美しかった。


楽しいことはいつも外にある
ファーンの姉がファーンに向けて、呆れたように放った言葉。

これは私のこと?
高校卒業してから実家を出て戻らず、会社も仕事も好きにピボットする。私の生き方もそんな感じだった。確かに、学生の頃からずっとそんなふうに思って行動してきたように思う。
「ここじゃないどこかに楽しいことがあるはず」
自分の根っこのスタンスを言い当てられたようで、ハッとした。

ただ、働き方が多様化してきたいま、世間の目、年齢、結果、いろんなことに葛藤している人もいるだろう。そんな人に向けて「大丈夫、あなただけじゃないよ」と、そっと肯定してくれるようにも聞こえた。

「ノマドの生活には、最後の「さよなら」がない。いつも交わすのは「また、どこかで」。そしてそれが叶う。」

「ノマドランド」より

やわらかな寂しさと孤独、ふんわりとした優しさと願いみたいなものが、ぎゅうっと詰まった映画でした。

まだの方はぜひ。
部屋を暗くして、好きなコーヒーやお酒を片手にゆっくり観るのがおすすめです。

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