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ボディガード? ボディガード!



〇要人警護は弊社におまかせ

 要人警護は弊社、株式会社ドール民間警察機構にお任せください。国内外問わず政財界・芸能界・スポーツ界など立場の違うクライアント様に即した警備プランを提案、提供させていだだきます。弊社には経験があります。50年以上に渡る歴史があります。その中には各国の紛争地域、各サミットでの警護実績なども含まれます。いずれもクライアント様から高評価を頂きました。もちろん、個人単位での警護も承ります。我々はあなた様の忠実な守護人形。お気軽にお問合せください。まずはお電話、アプリ、メールでのご一報をお待ちしております。

〇護衛対象

 高見悟(42)、元自衛隊特殊部隊出身の彼は第二の人生としてドール民間警察機構に就職。老後に向けてのキャリアを構築すべく日々奮闘している。今回の仕事はライブの警備。護衛対象はアイドル「高沢るん」。アイドルユニット「ルーシー・キャット・ザ・ラン」の元メンバーだ。ユニットから脱退したため、所属事務所「マリー・アントワネット」から独立する運びとなった。なぜ人気絶頂のグループから、突如〝卒業〟を表明したのか? その理由は一切発表されず、メンバーの中でも人気が高かったことも加え、多くの憶測を呼んでいる。
 彼女の新しい所属事務所からの依頼はコンサート会場の警護。何でも、脱退に不満を感じたファンから殺害予告が届いたらしい。〝裏切り者には死を〟という訳だ。
 悪質ないたずらの可能性も否定できないが、脅迫状に拳銃の弾丸が同封されていたことから、看過できない状況と判断し、依頼が来た敬意である。

〇犯人あらわる?

 ライブは盛況に行われ、無事に終わる。やはりクズファンのおイタか。そう思った矢先、スタッフ通路から、拳銃を乱射した男が現れた。スタッフに紛れて隠れていたのだ。
 高見は、前職の経験を活かして難なく押さえつける。これで本当に問題は解決だ。
「爆弾を抱えているわ」叫んだのは、高沢るん。確かに、胸に手りゅう弾をぶら下げている……。男に覆いかぶさる高見。爆風を抑えて、対象の被害を小さくするためだ。同時に、同僚が高沢を安全な場所へ避難させているだろう。
 突如、高見は吹き飛ばされた。爆風にではない。いや、男から無理やりはがされたのだ。代わりに、男に被さったのは? 
 高沢るんだった。

〇保護対象は誰だ?

「良かった。無事で」と高沢は言った。何事も無かったかのように。
「あんたは?」爆風をまともに受けて無事でいられるはずはない。
「そう。私は人間ではない。アンドロイドよ」
 はだけた肌の向こう側から金属のフレームが覗いている。
「さあ、私と一緒に安全な所へ」
「何を言っている?」
 大丈夫か? 同僚が高見に近づいてくる。懐に銃を忍ばせて。
「逃げるんだ。狙われているのは私じゃない。あんたなんだよ」
 

〇依頼の真意

 あんたを雇ったのは私だ。事務所の名前を借りたけど、私個人で申し込んだ
 なんのために?
 あんたを守るためだ。
 何故だ?
 あんたは証拠なんだよ。あの現場を目撃したんだ。
 なんの現場だ?

 マリー・アントワネット芸能事務所。その歴史は50年に及ぶ。数々の歌って踊れるアイドルグループを世に送り出し、楽しませてきた。女性のみで結成されたグループたちが醸し出すグルーブやたたずまいに惑わされた者は、男女問わず、かなりの数に及ぶ。そしてそれに憧れるものも。
 次世代の育成のため、マリー・アントワネットはダンススクールと合宿所を持っている。厳しいオーデションを勝ち抜いてきた少女たちは、合宿場に寝泊まりし日々修練する。
 これだけを聞いていれば美談に聞こえる。だが、そこでおぞましいことが起きているという。

〇老婆の裏側

 坂崎マリー。マリー・アントワネットの代表取締役。齢80を超える彼女は今だ現役で、ステージの舞台を演出し、現場取り仕切っている。そう現場だけならいい。現場だけなら。彼女は合宿所にしばしば顔をだし、全国から集まってきた才能豊かで夢を見る少女たちにある〝取引〟を持ち掛ける。
 夜のお相手である。
 強制的に性加害を受けた彼女たちの多くは心身ともに持ち崩し、去っていった者も多いという。
 政財界に強いパイプをもつので、各方面に圧力をかけているため、いまだ露呈していないということだ。うちの株式会社ドール民間警察機構の株主でもある。大口の。それで同僚が俺を襲ってきたわけだ。

〇決意

「そいつが本当ならそのババアはムショに送らないといけないだろう。おれも二人の娘を持つ身だ。それを知っているなら迷わず警察に出向くぞ」
「娘さんのお名前は?」
「……」高見は思い出せなかった。愛する娘たちの名前を
やつらに記憶消去されたのさ。そういうこともできる組織なんだよ
「取り戻す方法は?」
 私に協力してくれる組織がある。そこにあんたを連れて行って、記憶を戻す。マリーを追い込む証拠とともに。
 あんたは一体誰なんだ?
「私は高沢るんの影武者となるために作られたアンドロイド。本物は……本人は死んだよ。自殺。マリーのやつ、デビュー後も求めてきたんだ。私は高沢るんのコピー品。故に本人の無念を晴らす」
「分かった。俺も娘の思い出を取り戻す。上の子は確か丁度あんたぐらいの年だよ。多分だけど」
「そうかい。それなら〝パパ〟は私が守ってやるよ」
 ババアが生きている内に裁きの鉄槌を。保身のため尻尾を振ったクソマスコミたちに生き恥を。そして娘たちとの思い出を取り戻すため、二人は走る。

〇見どころは意外と多い

 思いテーマとは裏腹に、小気味良いアクションやギミックが飛び出す良作。とあるシーンで、バッテリーがいかれたEVスクーターを動かすために、自身の片方のオツのパイ(るんのバッテリーなのだ)を取り出して応急修理する場面や、二人を阻止するために立ちはだかるルーシーたち。オリガ型のアンドロイドである彼女たちのとの戦いの中で、まだ自身に秘密が隠されていることを知った高見など見所が多々ある。


2052年 製作:日本 配給:ユービックファクトリー


〇配給先からのお知らせ


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