カメムシ大パニック
それは誰にも必要とされていないし、その価値もない。しかし確実にそれは存在する。
一人よがり上等！ ゆるゆる設定、大歓迎！ 全力ご都合主義宣言！
note空想映画劇場 ゴールデン・フェイク ただいま開場いたします。
〇タイトル落ち？
タイトルが全て。カメムシ大暴れ。以上。
〇もう少し続けさせてください。
昆虫食は未来の食糧源と言われている。肉や魚よりも高タンパク質で、生産加工も容易。食糧危機の救世主とも目される。コオロギ、イナゴ、ハチの幼虫など有名である。
しかし、昆虫の利用は食糧だけなのか？ 否である。ある虫のある特性を利用した産業が生まれつつある。ある虫とはもちろん、カメムシである。
〇あの特徴が
カメムシは農作物に口を差し込み吸汁する農業害虫であるが、一般人にとってはいつの間にか部屋に侵入し、独特の悪臭を巻き散らかす不快害虫の側面の方が有名であろう。
誰しも鼻をつまみ、目を背けるそいつに目を付けたヤツがいた。
全国の半グレ・ヤクザを統合したネオヤクザ『ヘイリュウカイ』の下部組織（第18次団体）、『マッシブ・ドラゴン』だ。
借金の方に巻き上げた昆虫食の養殖牧場の設備を利用して、カメムシの養殖を始めたのだ。無論、そのままでは到底〝使えない〟。カメムシのDNAを違法操作して、芳香を醸し出すように改造。しかも、シャ〇ル、ニ〇ス、ブル〇リといった一流メーカの香水の品々を。香料として採取して、着色した水と混ぜて売る。新たなる市場の開拓に乗り出したのだ。
〇好事魔多し。
しかし、素人の遺伝子改造などたかが知れている。繁殖を繰り返すと、何世代か目には元に戻るのだ。いや、より一層厄介になったと言える。悪臭はさらに深みを増し、さらに致死性をも含むようなったのだ。突然変異である。新たなる力を手にしたカメムシたちは『マッシブ・ドラゴン』を壊滅させ、娑婆の世界、すなわち社会に飛び出していった。
〇地獄である
突然変異したカメムシは群れを組んで人を襲う。動物の汗や粘膜が好みのようで、大量のカメムシが肌に張り付きストローのような口を突き刺し肉汁を吸う。下手に手で払えば、猛毒の悪臭が体に染みついて、死に至る。突然起きた人災に成す術はなく、人々はパニックに陥る。数ミリの隙間さえあれば、カメムシはどこでも侵入できる。家の中に逃げ込んでも、安全地帯とは言えないのだ。
〇おじさん、走る。
本作の主人公：亀田幸吉（64）は定年間近の窓際刑事である。『マッシブ・ドラゴン』の構成員の死因と上納金（1億円）の行方を追っているうちに本件に巻き込まれた。
群がる昆虫に銃など効くはずもないが、他の者と違い恐慌に落ちず冷静に薬局に立ち寄った。
殺虫剤である。昆虫に効き目があるものが普通に効く。
これで一安心かと思いきや、また新た問題が発生する。
買占めである。
混乱に乗じて、転売して大儲けしようとする輩が表れたのだ。当然、値段が吊り上がり、購入を躊躇しているうちに、カメムシの大群が襲い掛かる。
匂いで悶死した死体の山をかき分け、上納金や改造遺伝子データを探す『マッシブ・ドラゴン』の生き残りや、この混乱を利用しようとする転売ヤーを、亀田幸吉が老体にムチを打ち追いかける。
〇因果応報
この手のジャンルで重要なことがある。
クズはクズなりの最後を遂げなくてはならない。
この作品も例外ではなく、チンピラはチンピラなりの、悪徳転売ヤーはそれに相応しい死に方をする。特に女転売ヤーのジョウルリの最後は身の毛がよだつ。眼球や口の中に無数のカメムシが飛び込み、羽音を立てながら体液を吸われ、ようやく全て吐き出したと思えばカメムシガスによって肌を泡立たせながら絶命する……。こんな死に方したくないランキングでは上位に入るだろう。しかしながら、観客の気分が晴れることもまた事実だ。
亀田幸吉もまた死を直面する危機にあうが、何とか窮地を脱する。殺虫剤のスプレーの意外な使い方を見ると（噴射したスプレーに火をつけることではない）、膝を叩く事兼ね合いだ。
〇それは正しい。
監督は今作がデビュー作の今野まさこ。撮影中は気負った風もなく、和気あいあいと進められたとのこと。インタビューによると、女転売ヤー役の芸人まぽこや亀田幸吉役の倉重真一がムードメーカーとなり、場の空気を和らげてくれたそうだ。彼女たちの掛け合いは金を払ってもよいレベルで、次回作は二人を夫婦役としたコメディを検討中と語る。
なお、この映画は当初4DXでの上映を検討されたようだが、監督が断固として拒否した。英断である。
〇最後に
このコンテンツはフィクションであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。数字なども同様です。すべてはフェイク。
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