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オリガ・オルガ・オリガは初期設定で使え

一人よがり上等! ゆるゆる設定、大歓迎! 全力ご都合主義宣言!
note空想映画劇場 ゴールデン・フェイク ただいま開場いたします。

マスゥ~イン

〇便利な世の中

 仕事も家庭も両立したいあなたに朗報です。家庭用新型アンドロイド・カーミラのご紹介です。掃除、洗濯の家事はもちろん、小さいお子様のお世話、家庭教師、不意に訪れたお客様へのおもてなしも可能です。追加オプションには……。
 ヘレン・マクドナルドは量販店から送られてきたアプリの通知カタログを見て、ため息をついた。
 高い。高級車一台分じゃないか。ベンツクラスの。
 とても手が出る代物じゃない……。だが、それでも私たちにはアンドロイド必要なのだ。

〇あなたたちの実りある生活のために

 マクドナルド夫妻には一人娘がいた。カレン・マクドナルド。4歳。成長著しいが、彼女にはまだ周囲の助けがいる。
 育休は終わり、来月には職場復帰しなければならない。夫も積極的に育児参加はしてくれるが、娘の急な発熱に即座に対応は難しい所がある。それは私も同じだ。どちらも仕事は順調、やすやすと手放したくない。経済的にも、だ。
 だから、私たちには必要なのだ。保育園の送り迎え、家事雑用、そして、娘の子守……。助けてほしい事がたくさんある。

〇我が家にとうとうアンドロイドがやってきた

 そんな中、夫が興奮気味に妻に話す。「見つけたぞ」。スマホの画面を差し出した。
RMS-117型。機体名「オリガ・オルガ・オリガ」。中古品だがスペックはそれほど低くはない。大手通販サイトに載っているからガセではないだろう。それに安心の日本製でサポートも充実しているようだ。そして何より、安い。夫妻はポチッと押すことに決めた。

〇ポンコツ? そして初期化

 数日後、届いたアンドロイドの梱包をとき、電源オン。期待に胸膨らませる二人。しかし、〝彼女〟はポンコツだった。
 動作はのろく、言葉もたどたどしい。そして力の加減ができず、食器を握りつぶしたり、家具を壊したりする始末。これでは家事などは任せられるわけがない。ましてや、娘の面倒など……、カレンの安全が第一なのに。
 ヘレンは返品しようとしたが、夫がサポートデスクに電話を掛けていた。初期化の手順を踏めば、改善されるかもと。で、そうした。

〇プログラムの実行。

 再起動後のオリガは、期待通りの働きをみせた。動作は機敏になり、家事もそつなくこなす。受け答えも的確で、カレンもすぐになついたようだ。これならまかせられるかも。
 ヘレンはオリガに〝やってほしいこと〟リストを読み上げる。家事や子守はもちろんのこと、一番大事なのはカレンだ。娘の将来のために行動してほしい……。
 了解でございます。奥様。オリガは恭しく頭を下げる。

〇それから数週間。

 オリガは良く働く。家族の健康を考えたバランスの良い食事、掃除洗濯家事全般、絵本の読み上げなどのカレンの世話……。メイド以上人間以上の働きを見せ、今や家族の一員のようだ。
 買ってよかった。休日の夕方一家だんらんのひと時、ヘレンはそう思った。
「しばらく席を外します。大事な役割を果たすために」
 数時間後、オリガが帰って来た。血まみれとなって。
「将来的にカレンの障害となる可能性のあるものを排除してきました」

〇物事には裏がある

「ご家庭に危険がせまっています」
 オリガはこの街のF地区に足を運んだという。反社がはびこる犯罪地区だ。マクドナルド家を襲おうと準備をしている反社の構成員を始末してきたという。だが、すでに別動隊がこちらに向かっているという。……でもなぜ我が家が襲われるの?
「それはご主人の仕事に関係があります」
 夫は会社の経理を担当しておりそれなりの地位にいる。立場を利用して会社の金をちょろまかしたそうだ。娘の将来のために。夫は叫ぶ。「それでもカーミラは買えなかったんだ」
 夫の会社の裏の顔は武器商人で、世界の紛争地区に向けて兵器の類を引き渡していたのだ。無論、非合法で手に入れたもの。そして表に出せない汚れた金の一部を、自身の秘密口座に移していたのだ。それがばれた。
 オリガもまた非合法に制作された兵器であった。軍事用アンドロイドの横流し品。オリガはこの家に来る前にメモリごとリセットされたのだが、その前にクラウドサーバーに自身のスキルデータ、戦場での戦闘メモリをダウンロードしたのだ。〝初期化〟がその合図で、今のオリガは以前の姿、本来の姿を取り戻している。
「簡易的ではありますが、地下にパニックルームを作りました。お二人はそこに」
 とまどいながらも、カレンを抱いてその場所に案内させようとするヘレン。
「いや、そこにはご主人と。ヤツらは私とカレンで処分します

〇全ては娘の将来のために

 呆然とする夫妻。
「彼女には才能があります。10年後には私をしのぐキリング・マスゥ~インになるでしょう」
 オリガはカレンに子供でも握れる小さな拳銃を渡した。W社のPP〇だ。クズどもから奪い取ったもののひとつ。
「カレン。ゴー」
 カレンは拳銃を分解し、3分もかからず組み立て、構えた。
「親は子供の才能を信じ、そこを伸ばす教育をするべきです」
 抗議をするヘレン。だが、銃声がそれをかき消す。
「娘さんの教育方針はのちほど話し合いましょう」二人を強引にパニックルームに押し込むオリガ。
 今、現在のキリング・マスゥ~インと将来のキリング・マスゥ~インが、我が家の平和を脅かす悪党どもを迎え撃つ!

〇鋭意制作中!

 小気味のよいアクションコメディ。ゆる~い寸劇から流れるようにグロアクションに変貌する様は一見の価値がある。オリガ役を務めたリン・坂本は数々のアクション映画のスタントダブルを務めた猛者。満を持しての表舞台へ。巻き込まれたヘレン役のイザベル・フォンのコメディエンヌぶりも板についている。カレン役のエイミー・パインも実にかわいい。ホームア〇ーン的なピタゴラ・デストラップでオリガを援護するキリングコンビネーションはもう最高。
 各方面からの高評価に加え、興行収入も予想以上のため、続編の企画が上がるのも必然であろう。リンのSNSによると、現在続編の撮影中で、成長し予言どおりキリング・マスゥ~インとなったカレンと、アップデートを繰り返しパワーアップしたオリガとのバディものになるらしい。そして、本作では途中空気となったヘレンの夫、カレンの父がラスボスになり、本名も明らかになるそうだ。


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