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ベットせよ! ハンデ票数25000

〇迷惑アプリ?

『ザ・セレクション』はスマホ用の違法アプリである。とある時期、とある場所で、ランダムに勝手にインストールされる違法ソフトだ。あらゆるセキュリティソフトの障壁を乗り越えて勝手にスマホに侵入する。全く迷惑極まりないが、開かずに消去すれば個人情報が漏れることはない。だが開いてしまったら? そしてさらに〝進めて〟しまったら? あなたは、ある種の依存症に陥るかもしれない。

〇オンラインカジノ

『ザ・セレクション』はとあるオンラインカジノへつながるただ一つのアプリである。ここにしか存在しない唯一無二のとあるジャンルの。ある時は4年に一度、3年に一度、あるいは〝大人の事情〟によって時期がずれる時も。いずれにせよ不定期に訪れるそれの参加は、ある一定の年齢に達すると誰でも資格が与えられる。
 選挙である。

〇選挙ギャンブル

 国政、地方、国会議員、県議会・市議会、知事・市長……。選挙があるところに、『ザ・セレクション』がランダムに、だが強制的にダウンロードされる。そして、そのアプリは問う。お前は参加するのか、と。〝参加〟を拒否すれば、そのままアプリは勝手に消える。これ以上、アプリからの干渉はなく害もない。だが、〝参加〟の意志の表明として〝YES〟をタップしてしまえば……。

〇ざっくりとしたルール。

 アプリは各種選挙の公示日から投票日の翌日まで、スマホに在留する。期日が過ぎれば自動的に消える。賭ける選挙を選択し、さらに候補者とその掛け金を入力する。賭けの対象となる選挙には当然圧倒的な強さですぐに当確をたたき出す本命候補が存在する。全員が本命に賭ければ賭けは成り立たない。そこで〝ハンデ〟が存在する。落選候補・次点の候補にある一定の票数で離して当選しなければ、勝ちと見做されず勝ち金を手に入れることはできない。当選確実のA候補のハンデが10000だとしたら次点の候補Bに総票数10000以上の差をつけて当選しなければ勝ち金は得られない。本命故にオッズも低い。逆に泡沫と呼ばれる候補がまかり間違えて当選してしまったら……。一攫千金のチャンスである。そして勝ち金は即座に指定口座に支払われ、もし負けてしまったら強制的に徴収される。勝手に口座から支払われ、足りなければ、いつの間にか財産を処分される(不動産や車などが換金される)。さらなる不足分は今後の収入から(給料など)から差し引かれる。払い終えるまで。まさに静かなる取り立て屋である。

〇違法賭博を摘発せよ

 警視庁は『ザ・セレクション』を取り締まるべく、策を練り始める。反社組織に資金が流れるのは阻止しなければならないが、いまだ尻尾を掴ませない。『ザ・セレクション』絡みで自己破産の報告が増え、もはや都市伝説の類ではなくなったのだ。そんな矢先、某県某市の警察官小石川隆のスマホに『ザ・セレクション』のアプリがダウンロードされた、という情報が入った。数週間後、市会議員選挙が行われるのだ。この機会を利用するべく、警視庁は捜査第二課と第四課の刑事、胡桃沢明憲と高沢あゆみを出向させる。三人で協力し、『ザ・セレクション』の正体を掴み、首謀者を検挙せよとの命令が下された。

〇囮作戦?

 胡桃沢と高沢は小石川に指示を与える。ギャンブルに参加しろ、と。絶対に落選しそうなヤツに有り金全部賭けろ。取り立ての時の金の流れ、資産の処分、換金の流れでホシを追うわ。取られた金は後で取り返すから……。渋々ながら承知する小石川。

〇ハプニング発生

 小石川が行方不明になった。逃げたのだ。金を賭けた泡沫候補が、何らかの方法で支持率を上げ、当確の勢いで選挙戦を戦っていることが世論調査により判明したからだ。大金を掴んでそのまま第二の人生を歩むつもりなのだろう。不自然な支持率に、二人は第三の存在、当確師の存在を確信する。一般的には裏社会の選挙戦コンサルタントと噂されている存在だ。だが、高沢のツテで裏社会の人間も小石川を追っていることを知る。許可なく自分たちのシマを荒らす『ザ・セレクション』の存在を疎ましく思っているのだ。裏社会でも『ザ・セレクション』を追っている? では、首謀者は一体誰なんだ? 胡桃沢は一つの仮説を立てる。『ザ・セレクション』そのものが黒幕なのではないのか、アプリ間のネットワーク内で情報交換を繰り返しているうちに生まれた情報生命体なのではないのか? それでは何のために〝生まれた〟のだ? 謎は多いがまずは、小石川を反社の連中より先に確保しなければならない。はたして、二人は真相ににたどり着けるのだろうか。そして「UFO空港を建設し、銀河連邦に加盟しようの会」から出馬したなべしまみちお候補(78)は、見事議席を獲得できるのか? 

〇キャンペーン

 この映画、投票率アップを目的に制作された作品で、発注者はなんと日本政府! 役人にこんなブッとんだセンスがあるとは……。いやここである噂が流れだす。文書作成をサポートするAIシステムが提案したというもの。映画の結末とともに謎の部分である。


2031年4月 日本 ©ベットせよ!制作委員会


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