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ドランク・ビッチ 酔拳  16Kデジタルリマスター

 お前らの好きなものを3つ知っているぞ。暴力! 金! お姉ちゃん! それらが全てここにある。薄皮コンプライアンスを突き破れ! 時を超え、16Kデジタルリマスターで蘇る。酔えば酔うほどグロくなる、『ドランク・ビッチ 酔拳』! イカれたショーの始まりです。



〇地球は占領された

 時は未来。地球は外宇宙異星人連合、通称エイリアン・ネイションに支配された。その圧倒的な武力に地球連邦はあっさり降伏。異星人どもの支配下に堕ちた。あまりにも早期の陥落。誰かがヤツラに手引きしたものがいる。裏切り者・ユダだ。
 ユダにはエイリアン・ネイションから特権が与えられた。〝上納金〟を納める代わりに。身の安全と割当区域の支配権を。そして、ユダには反社組織出身のものが多い。……あとはいわずもがな。

〇酔っぱらいはクズだ

「おい、姉ちゃん。こっち来て酌しろよ」
 居酒屋チェーン店。店員に昭和ハラスメントをするのは、ハン・グレーのシブヤだ。この辺を支配するユダの一員である。今日も彼はやりたい放題。恐喝、暴行お手の物。気に入らんヤツがいれば、鉄拳制裁で葬ってやる。なんせ、おれのケツモチはエイリアン様だ。文句があるならかかってこい。
「うい~」シブヤに近づく者がいた。女だ。足元がおぼつかない千鳥足。ひょうたん型の徳利を肩に背負っていた。女は明らかに酔っている。泥酔というほどに。
「おい」シブヤの取り巻きが女を制しようとする——、次の瞬間、シブヤの頭に徳利から酒が注がれた。「ぶち殺せ」激怒するシブヤ。4,5人の取り巻きたちが一斉に女に襲い掛かる——。
 しかし女は奇妙な動きをした。

〇その名は……

 女の身体は弛緩し、ゆらゆら揺れていた。相変わらず足元は怪しげな揺らぎのステップを踏んでいる。それでいて、取り巻きどもの暴力を余裕でかわし、逆に相手の鼻や耳をつまんで挑発する。時折、他の客の酒のつまみを拝借しながら(ザンギ)、独特のリズムで取り巻きたちを翻弄する。
 突如、取り巻きたちが叫び声を上げた。女がつまんだ鼻や耳が、ない。その肉片は店の床に落ちていた——。あいつの指はペンチか。なんというピンチ力だ。女につままれると、厄介な事になる。シブヤは拳銃を取り出し、撃った。しかし、その女にとって、飛び道具なぞ何の障害にもならない。ふわりと避けて、シブヤの眼球をつまみ出す。
「お前、カワサキの居場所を知っているだろう。知っているはずだ」
「知ってどうする?」
「お前には関係がない」女は眼球を潰して、もう一つの目をつまみ出した。
 屈服したシブヤにカワサキなる人物の居場所を聞き出すと、喉をつまみ、そのまま砕いた。
 たまたま店で食事をしていた老人が呟いた。
 あれは酔拳、酔夢天翔天女拳だ——。

〇女の名は

 その女の名はルイ・イシマル。かつてイシマル・コーポレーションの社長令嬢、元セレブだ。父親ジャッキー・イシマルは会社を上げて、エイリアン・ネイションへの抵抗運動を繰り広げていた。しかし、彼にも、ユダの魔の手が伸びる。エイリアン・ネイションに屈服しない彼は、ユダ達の手によって暗殺されてしまう。下手人は社長秘書だったグンジ・カワサキ。カワサキは、ガイの首を手土産にエイリアン・ネイションから広範囲の割当区域の統治権を手に入れたのだ。三年前のことだ。
 ルイは駆けつけたが間に合わなかった。修行中の身だったので、父の側にいれなかったのだ。ルイは後悔とともに復讐を誓う。この酔夢天翔天女拳で、カワサキを地獄に落とすのだ。邪魔をするのは誰であろうと許さない。例え、異形のエイリアンでもだ。
 

〇酔夢天翔天女拳とは

 酔八拳から派生した中国拳法の流れをもつ格闘術。ルイの祖母、キイにより創設。近代改修と称して、酔拳に加え、ボクシング、レスリング、柔術などの現代格闘技の要素も加えている。修行は過酷を極め、ルイはセレブ時代、10カラットのダイヤを指で砕く修行を自らに課していた。酔夢の極意は〝弛緩〟にあり……。
 嘘である。
 酒だ。酒こそが酔夢を完成させる。年代もののワインのような高級な酒ならば、エレガントに。コンビニで売っているような安酒ならば、下品に泥臭く……。酒の数だけ奥義がある!
 

〇ぶっ壊れ演技。そして主題歌はもちろん、拳法混乱(カンフージョン)。

 ルイはカワサキのアジトに殴り込む。銃器をものともせずに、成敗、成敗。首を刎ね、腕は千切るし、腸ははみ出る。途中、何故か全裸で酔拳をする事になったり、豊胸した胸からシリコンの代わりに入れておいた暗器を取り出して戦うシーンがある。クライマックスは黒幕のエイリアン。ラストボスのスライム型エイリアンを、下腹部の秘密ポケットに隠しておいたミニチュアボトルと一緒に飲み干して、リバースして仕留めるという何ともお下劣なビッチの嗜み。
 ルイ・イシマルを演じたのはゾーイ・トーイ(本名:田中幸子)。本作で魅せたぶっ壊れた演技だけでなく、後に『エッシャーの秋』で職務倫理に悩む医師の役を演じたりと、ふり幅の広い女優(彼女は『エッシャーの秋』でオ〇カーを獲得する)。
 そしてこのリマスターの発表で新たな企画が動きだす。各世界の〝ビッチ〟を集めたユニバース、『ビッチ・アッセンブル(仮)』である。何とも嫌なマルチバースだが、好事家たちの酒の肴はつきない模様。
 
 
2050年 日米台合作 配給:ユービックファクトリー


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