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シャークマーメード

あなたの人生を決して変えることはない note空想映画劇場 ゴールデン・フェイク ただいま開場いたします。

大事なことは何度でも

〇事の発端

 観光業で潤う某南国の沖合に浮かぶリゾートアイランド。島々の北東沖合数キロメートル。浅瀬で観光地の死角となったこの場所は、地元の者しかしらない静かな海。傲慢な観光客の喧騒から逃れる数少ない安全地帯に見える。しかし、善良な地元民はこの付近は絶対に避ける場所だ。
 裏仕事。華やかな基幹産業の光には影がある。観光に携わる地元民の賃金は安い。この街で手っ取り早くのしあがるには、犯罪に手を染めるしかないのだ。
 そして今、〝仕事中〟の貨物船が停泊している。貨物船とは言っても、漁船クラスの小さくオンボロの船。喫水線が甲板ぎりぎりまで近づいている。大量の荷物を、違法に運んでいる証拠だ。
 そして船員が、おそらく荷であるドラム缶を転がし海の中に捨てる。不法投棄。中身は医療用ナノマシンの規格外品。不良品だ。正規の処分には高額な費用がかかる……。あとは言わずもがな。
 そして10年が経過する……。

〇お約束!

 ドラム缶は予想(期待)通り腐食し、中から欠陥ナノマシンが漏れてしまう。本来、絆創膏の裏側などに塗布され、ケガ人本人の細胞をコピーし治癒を早めるものだったが、そこは不良品、所かまわず周囲の生物に噛みついて増殖しようとする。しかし、適合する種はほとんどなく、唯一適合したのが……。サメ。

〇普通、逆だろう。逆!

 欠陥ナノマシンは、自身が持つ人のDNAとサメのDNAを結合させ、新たな生物を生み出した。人と魚類の融合。そう。マーメードの誕生である。マーメードは全て女性の外観をしている。少なくともそう見える。女性の上半身に尾ひれ、そしてサメの頭がついている。女の裸にサメの顔、女の裸にサメの顔!

〇登場人物イカれている。

 マーメードの性格は狂暴で、その性格は取り込んだホオジロザメの影響を受けているようだ。皮膚は硬く、弾丸や銛を通さない。しかもピラニアの様に群れを成して行動する。素人では何人束になっても太刀打ちはできないだろう。今の所は逃げるしかない。丁度、沖合にはセレブ・クルーザーが停泊しており、乱痴気騒ぎのパーティを繰り広げている。急いで連絡し、避難させなければならない……。
「まあ、待て」。海洋生物研究家のグレッグ・バトラーが言う。筋骨隆々で言動も荒く、とても知的に見えない。「あのクズどもで試してみよう」。
「そうね。私たちはあの生物の特性が分からない」と同意するのはナノマシン生物工学の権威ローラ・マキ。つまりわざと襲わせろと言っているのだ。
 マーメードたちは容赦なく、セレブたちに襲い掛かる。頭は喰われ、腕はもがれ、内臓がはみ出し犠牲者たち。クルーザー船は爆発炎上、生存者は皆無だ。そして二人が出した結論は……。
「あれはヤバイな」
「そうね」
 ……。

〇対抗策。そして……。

 結局の所、大きく顎を開いたところに高火力の銃器で攻撃するしかないようだ。他に策があるとすれば、ローラが開発した試作型のウイルスナノマシンをばらまいて、マーメードたちの体組成を破壊、消滅させることしかない。ただあくまでも理論上の話で、ウイルスも試作段階。データがなく、どんな影響が出るかわからないとのこと。
「やりたまえ。私が責任を持つ」そう会議に口をはさんだのは、地元の有力者であるウイリアム・ジャクソン国会議員。これ以上、マーメードたちに居座られては儲けに、観光業界からの献金が減るそうだ。
 渋々ながら、ウイルスをまくマッスル学者グレッグ。「どんなことになっても知らないぜ」

〇その通りに……。

 ウイルスに感染したマーメードたちは、集合し一つのマーメードになった。巨大なシャークマーメード。凶暴さはさらにまし、沿岸警備隊の艦船を沈めて、リゾートビーチに向かって泳ぎ出す。

〇海軍VSジャイアントシャークマーメード

 海軍といえどもジャイアントシャークマーメードには苦戦を強いられた。旗艦のイージス艦を残し、全滅。やむなく撤退することになる。なぜか乗船できたローラとグレッグがこう提案する。改良型ナノマシンウイルスをヤツにぶち込むしかない、と。先の使用でデータが取れた。改良できる。今度は大丈夫。そのために、貴船にあるパソコンと3Dプリンターを貸してほしい。弾は責任もって、おれがぶち込んでやるから。
 なぜかその提案を簡単に受けいれる提督。なぜか船に装備してある3Dプリンターとパソコン。なぜか重火器の扱いに詳しいマッスル学者。なぜか……。様々な幸運が重なり、ついに改良型ナノワクチンウイルス弾が完成する。人類の命運を賭けて出港するイージス艦。はたして地球の覇者はどちらだ?

〇大事なこと……。

 快作。パニックスリラーからスラッシャームービー、そして怪獣映画へ。CGは安いが、グロシーンは丁寧だ。学者のグレッグを演じたカール・モーラーやローラ役のサラ・フランクリン開演も相まって、本国アメリカではそこそこのHIT(全米興行収益12週連続9位)を飛ばしたようだ。シリーズ化も決まり、ローラ役のサラ・フランクリンの続投も発表された。そして最後に大事なことなので何度も言います。
 シャークマーメード。女の裸にサメの顔。女の裸にサメの顔!


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