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肩の痛みは「感覚情報」がカギ!麻痺や五十肩などの症例から学ぶ肩関節のメカニズムと治療法



はじめに 軽度の麻痺で退院後肩が痛くなった女性から学んだ(大反省した)こと


ある女性患者さんの早期退院を心配される作業療法士の先輩

むかしむかし、理学療法士として、とある脳卒中専門の病院で働いていたころのことです

ダメPTと呼ばれていた頃を少し抜けて
ほんの少し自分の知識と技術に自信を持ち始めていた頃です

回復期病棟 で働いていました

回復期病棟とは
急性期と呼ばれる点滴治療が終了し
一番、脳神経が再構築されやすい時期に
集中的にリハビリを行い
患者さんがご自宅へ退院できることを目標とする
病棟です


ある女性の患者さんが
「そろそろ退院してもらうか?」

という話題が出ていました

その女性患者さんは
年齢50歳代
脳の中の血管が出血され
点滴治療が終了後も軽い麻痺が残っていました。

回復期病棟に転棟された後は
順調に回復され
既に、立ったり歩いたりなどの運動は問題なしというレベルとなっていました。

就労もあり
お客さんのご自宅へ商品を届けるような
お仕事で
「退院したら、迷惑をかけた分がんばるつもり!」
と希望されていました

理学療法士としては
「大丈夫だと思います。できれば少しずつ慣らしていけるように、会社さんのご協力が得られると最良です」
と私は会議で発言しました

ただ、その患者さんを一緒にリハビリしていた
優秀な作業療法士のB先輩は

「・・・・・・」

としばし沈黙
渋い表情

そして
「回復期病棟入院待ちの患者さんも多いですし・・・
致し方無いですね。
退院OKです。」
とのコメント

当時の私には、B先輩が何を心配されているのかがわかりませんでした
当然、先輩に質問しました
何を心配されているのか?

「う~ん、僕は心配性だからね。
普通に生活しているなら問題ないと思うんだけど・・・。
仕事がハードになった時に

がどうなるかちょっと心配なんだ」

と肩を心配されていました。


でも、私の評価では
関節可動域は全く問題なく
筋力も麻痺を感じさせないくらい十分ありました

正直頭の中は

でしたが
その女性患者さんは
予定よりも少し早い
自宅退院をされました。


1か月後に再開。そして麻痺側の肩に痛みが!

実はその患者さんにお願いをしていました

1か月後の定期受診の時に
またリハビリ室に遊びに来てください

私もB先輩も、退院後の状態確認がしたかったからです

お仕事は再開されていました

どこか困ったことはありませんか・・・?

とお聞きした時

「あ、実はこっち(麻痺側)の肩が痛くなって困ったことあったんです

でも B先生が教えてくれた体操をして

今は痛みはなくなったんですよ~」

と、答えられました

B先輩は
肩が痛くなることを予想され
そのための対処法を
事前に施していたなんて!

かっけぇ~~~~

って思いましたねぇ~

そして、自分の知識と技術の未熟さを
痛感したのであります

良い思い出です


未雨綢繆(みうちゅうむ 雨が降る前に傘を用意しようね)
呂氏春秋




麻痺・五十肩など、なぜ肩は痛くなりやすいのでしょう?

先ほどの例は

脳出血による麻痺が軽度で
全く問題が無いように見えても
就労などで肩をたくさん使ううちに
痛みが出ることがある

という教訓でした

肩が痛くなるものとして

五十肩

も有名ですね。

五十肩となる
明確な原因は実ははっきりしていないそうです
ただ、

「骨折や手術などで、
どうしても腕を動かせない時期
があると
その後五十肩になりやすいようだ」

というのは間違いないようです


また、
加齢に伴って
肩にあるたくさんの靭帯や筋肉で

特定の靭帯・筋肉ばかりが強くなりすぎ
たり
特定の靭帯・筋肉ばかりが弱くなりすぎ
たりして

肩の関節を支えたり動かしたりする
靭帯・筋肉の全体的な

バランスが崩れた

ことで
肩に痛みが生じることがあります


実は脳卒中による麻痺の場合

「軽い麻痺。」
と診断されても

発症直後は肩の周りの筋肉の緊張は全体的に落ち
そこから回復していっても
全体の筋肉が一緒に良くなっていくのではなく
回復の足並みがずれているため
肩関節を動かす筋肉の

バランスは崩れている状態

になりやすいのです

(かなりざっくりとした説明です。わかりやすさ優先。ご了承ください)


五十肩について参考になるサイト


肩関節はなぜそんなにデリケート?

肩の話をしているのに、
まずは股関節を見てみましょう

注目していただきたいのは、関節としての安定性です
骨盤にある専用の穴に
太ももの骨が
ずぼっ
と入っています

股関節って
ずぼっ
としていて安定していますね!

それに対し、肩関節はどうでしょうか?

何ですかこの頼りなさは?
肩甲骨にある穴はちっさいし
指みたいな骨が2本と鎖骨で
ちょん
とつまんでいるように見えませんか?(笑)
左の図から順に説明しますね
あまりにも不安定な関節のため、靭帯がつなぎとめるようにたくさん巻かれます
そして、肩の複雑な動きを可能にする、細かい筋肉がたくさんくっついています
最後に肩全体を守るように、比較的大きな筋肉で覆いつくします
これが肩関節の特徴ですね


なぜ、肩関節は
腕の骨を

ちょん

とつまんでいるだけのような
構造をしているのでしょうね?


ご存じの方も多いと思いますが
それは、

人間って
手でいろいろなことをするから
付け根の肩も
自由に動ける方が
いいよね~

という方針で進化していったからのようです

人間は道具を使うことで、今の生活を手に入れることができたわけですもんね

参考になるサイトです


話を戻しますが
人間が人間であるためには
肩の関節は

ちょん

が必須条件です(笑)


つまりどうしても

痛みやすい関節

であるということです


私のような治療家は
肩の治療は特に慎重です

慎重であるからこそ

「肩の痛みにはこのタイソーをどーぞー。一発で治ります!」

なんて動画や文章は作れません
(そういう情報発信をしている人を批判するものではありませんよ!)

ひとりひとりの症状に合わせた
オーダーメイドの治療を
提供することが肝要なのです

結局、全身の治療に当てはまることですけどね
大変なことですが
やりがいあります(笑)


いろいろな肩の治療法がありますが・・・ご注意を


肩が痛いのはつらいですよね

わかりますよ

私も数年前まで
肩の痛みを抱えながら
リハビリの仕事をしていましたからね

「何か肩の痛みをとってくれるような、筋トレないかな?」

検索するのもよくわかります

ただ、ご注意いただきたいことがあります

前の章でお話した通り

肩の関節は
大変大変
デリケート
でしたね


肩のために
運動
筋トレ
ストレッチ
などを行うことは
良いことではあるのですが

肩のバランスを崩す可能性も
高いのです

痛くなりそう
良くならない
なら
すぐやめる!

これだけは守っていただきたいと
思っています

お願いします

あなたには
「肩を落として」人生を歩かないように
堂々と「肩で風を切って」歩いてほしいので
どうぞよろしくお願いいたします!(笑)


「中庸は美徳の境地である。」
アリストテレス



肩を動かすために必要なこと。「感覚情報」が重要


それにしても、肩関節ってすごい関節です

すっごい繊細な指の動きも
それを支える土台の1つとして
繊細な動きをしています

かと思えば
狩りで槍を投げたり
漁師さんが銛を投げたり
力強さとコントロールが求められる
動きも可能です


運動の司令塔は
脳神経です

では、
脳神経は
どうしてそのような動きを
肩に的確に命令することが
できるのでしょう?

詳しくは脳科学の先生方に任せますが

あなたと私が知るべきものがあります

それは

脳が適切に命令を出すために
絶対必要なものは

感覚情報である

ということです。

この場合の感覚情報とは、
肩にある神経細胞が受け取る刺激や変化のことです。

感覚情報は、脳に送られて運動命令に反映されます。

感覚情報が正確であれば、
脳は適切な運動命令を出すことができます。

しかし、感覚情報が不足したり歪んだりすると、
脳は誤った運動命令を出すことがあります。

これが肩の痛みやトラブルの原因になることがあります


逆に言えば

適切な感覚情報を
肩に入れてあげることで

治療がスムーズに進みやすくなります


麻痺
五十肩などで
肩に痛みを抱えている方は

肩(正確には肩甲帯)全体に
入ってくる感覚に
鈍感になっている

そんな人がたくさんいます

私の経験上ですが
ほぼ全員
です

明初庵としましては
まずは、

肩に入ってくる感覚を

ちゃんと受け止め
それに応じられる

そんな肩の状態を
作りましょうね


というところから
治療をスタートしています



感覚神経・中枢神経・運動神経についての説明があります。
好きな人じゃなければ楽しくない読み物です(笑)


自分でできる肩の状態改善方法(動画)

これは私の文章力では表現できませんので
動画で説明させていただきました

注意事項は
ご自分の痛みが出始める境目を見極める
ことです

これを守っていただければ
ゆっくりですが
確実に改善へ向かう素地ができますよ



「極端は、中庸に向かう道標である。」
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ



最後にまとめ


  • 肩の痛みは、肩関節の周りの人体や筋肉のバランスを欠いていることが原因であることが多い。

  • 肩に良いとされる、筋トレ・ストレッチでかえって肩を痛める可能性がある。

  • 肩の状態改善方法は、ひとりひとりの症状に合わせたオーダーメイドのものであるべきである。必要に応じて専門家に相談することも大切である。


お話は以上です
最後までお読みいただきありがとうございます

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喜んで加筆修正いたします。

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