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【短編】 カコミライ運送

 深夜、眠ろうと思って布団に入っ瞬間、アパートの部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「こんばんは、カコミライ運送の宅配便です」
 深夜の配達なんて迷惑でしかないが、こんな時間まで働いている配達員も大変だなと思った。
「この荷物は、現在から百年後の二二二二年の世界から届けられたものです。通常時間の荷物とは違うため、開封する前に必ず注意書きをお読み下さい」
 私は、配達員からダンボール箱と注意書きの紙を受け取り、首を傾げながら、とりあえず注意書きを読んでみた。
「時間を超えて届けられた荷物は、取扱によっては危険を伴うため注意が必要です。過去からの荷物はとくに問題ありませんが、未来からの荷物は、開封や使用をすることで、歴史の変更や、タイムパラドックス(最悪の場合、世界が崩壊します)の危険が発生する場合がありますので……」
 これはようするに、SF小説やアニメでよくある話で、私を驚かせるための誰かのイタズラなのだろうと思った。
 だからその夜は、とても眠かったし、馬鹿げたイタズラには付き合っていられないと思って、荷物を放置したまま眠ることにした。

 次の日の朝、目が覚めると布団の横に女性がいて、私の顔を覗き込んでいた。
「朝から悪いんだけど、昨夜の荷物を今すぐ開封してもらえないかしら?」
 そう彼女は言って、寝ぼけ顔の私にハサミを渡した。
「注意書きには、未来からの荷物は必ず開封しなければならないと書いてあったでしょ? あなた読んでないの?」
 君はいったい誰なんだと聞いたら、彼女は自分のことを歴史管理人の職員だと言った。
「未来から届いた荷物の開封には危険が伴うけど、開封しないと時間が停滞して、歴史が先に進めなくなるのよ」
 今日は仕事が休みだからまだいいが、イタズラもいい加減にしろよと私は言って、ふたたび布団にもぐりこんだ。
「だからイタズラじゃなくて、今日のお昼十二時までに荷物を開封しないと世界が大変なことになるんだって!」
 私はただ眠いだけで、世界がどうなろうと知ったことではない。
 でも、荷物を開封しないと彼女が帰ってくれそうにないので、ハサミでダンボール箱のガムテープを切ったら、箱一杯の黄色いミカンと手紙が入っていた。
「初めてミカンが収穫できたので、あなたに送ります」
 そう手紙には書いてあった。
「あなたのことは全く知りませんが、百年前の人が食べても美味しいと言ってくれるのか、それが気になったので」

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