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【短編】 同級生の家族と、あやしげな薬局と、妄想妊娠

「おはようございます。高校の同級生だった伊藤です」
 朝起きると、アパートの部屋に人が何人か寝ていた。
「近くを通ったものだから、夜も遅かったし、家族で勝手に泊めさせてもらいました」
 同級生は何となく見覚えがあったが、ほとんど記憶がない。
「父は私用があるので別行動になりますが、よかったら、われわれ兄弟と一緒にクローバー印の薬局へ行きましょう」

 薬局とか意味が分からなかったが、その日は暇だったから、気分転換に彼らと一緒に一〇分ほど歩くと、確かにそれらしき店があった。
「伊藤兄弟、久しぶりね」
 店に入ると、上品な服装をした若い女性が現れた。
「お父様の伊藤大佐は、サタンの待つ戦地へ向かわれたのね」
 店内には『人間関係が浄化されるサプリ、開発しました! 定価五万円』などのあやしげな広告が、いくつも貼られている。
 伊藤兄弟は女性と奥の部屋へ行ってしまったので、私はあくびをして、店内の長椅子で昼寝をした……。

「あなたって、いったい何者?」
 目が覚めて、声のするほうを見ると、さっきのの女性が、床で股を広げながら私を睨んでいた。
「あたくし、いま赤ちゃん生まれそうだから、あなたが取り上げなさい」
 確かに、女性の陰部からはすでに何かが出ているが、店のスタッフや客は、なぜか全く無視している。
 私は大きなため息をついたあと、彼女の陰部に指を突っ込むと、陰部はゴムみたいに大きく開いて、羊水のようなものが溢れだした。
 陰部の池には、男性の陰茎のようなものが突き出ており、それを引っ張り出そうとしても全然抜けない。
 だから私は、とりあえず陰茎を元に戻して、彼女の陰部を閉じた。
「そういえばあたくし、まだ男性との経験がなくて、赤ちゃんが生まれるわけありませんでしたわ」

 私は、液体でぐちょぐちょになった手を洗おうと、店のキッチンのような場所へ行くと、板前姿の男が、いきなり包丁で切りかかってきた。
「お前が先ほどあれした、くるみ女史は、お前のことがたいそう気に入られたらしい」
 さっきの、妄想出産の女性か?
「俺は、くるみ女史に触れることさえ出来ないのに、お前は、お前は!」
 私だって、無理やりだったんだよ。それより、伊藤兄弟はどこだ?
「彼らのことは知らない。お前は、くるみ女史を幸せにするためにクローバー教会に入信しろ」
 ああ、そういうことか。
「くるみ女史の気持ちを踏みにじるなら、今すぐお前を殺す」
 なんて酷い一日だ。

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