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ひとり
ときどき、無性にひとりになりたいときがある。
特になにをするわけでもなく、濁ったり、透明になったり、世界から切り離された自分を、時間をかけて見つめたい。
よごれた河川に落ちたペットボトルの空き容器のように揺蕩いながら、めぐる思考に流れ流されていたい。
砂浜に流れ着いたとびきりの貝殻を探すように、忙しない日々にまぎれてしまった特別を探したい。
体にぴたりと合ったソファに寝そべりながら、自分に問う。
わたしはいま、ひとりだろうか。
伏せたまぶたの裏に、あなたが浮かぶ。
形のよくてかたいおでこ、笑うと片側だけつりあがる不均衡な口角、声に合わせて動く大きな喉ぼとけ。
隣にいたあなたを思い返しながら、輪郭をなぞるように描いていく。
離れているから、思い出す。
ひとりでいるから、反芻する。
そうして少しずつ、深さを増してゆく。
この部屋には誰もいないけれど、わたしのほかに誰もいないけれど、孤独にはなれない。
ひとりであるようで、ひとりにはならない。
思い描けば、いつでもあなたがここにいる。
そうしていつも、こころのすみにいてほしい。あなたにいてほしい。
そしてわたしも、あなたにとって、そんな存在でありますように。
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