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片桐チハル
2016年6月5日 16:01
「くらげってさ、死ぬときは水に溶けてなくなるんだって」慣れた手つきでわたしを抱いたあと、身支度を整えながら男が言った。「帰るの?」「ごめんね、あんまり時間がなくて」「……全然、いいよ」「今度はきっと、もっと時間をつくるから」「うん、楽しみにしてるね」うわべだけの約束に期待を寄せるふりをしながら、あわてて部屋を出る男を見送り、洗面台の前に立つ。はり付いた笑顔をほどくように、両手で顔