眠る前に

眠る前に

             ゆきのさきこ

毎晩 眠る前に
一山越えたところにある実家の
母の寝息を確かめ
神戸に住む娘の家の 片付いた台所を思い
近所に住む息子の家の 
寝かしつけられたばかりの孫を思う
時には 夏に出会った
傾山の岩陰に棲む鹿の震えを思いながら
そのうち眠りに入るのだけれど
加えて 近頃
雪原に繰り出す兵士を呼び止めて
トルストイやドストエフスキーについて
尋ねてみなければと
それも なるべく急がねばと
思うのだ

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