蠍会「お寿司も指輪も自分で買おう」

かれこれ10年以上、
(いや20代後半からだからそれ以上か…)
毎年この時期になると、
誕生日が近い女友だち3人と「蠍会」というものを開いている。

誕生日の前後の日程で、
自分たちのために、自分たちが気になった「ちょっといい店」に行く。
そして会の最後には3人でプレゼント交換をする、というものだ。

20代のころ、
「ちょっといい店」って、
どんな素敵な人に連れてきてもらうか、
そればかり考えていた。

もちろん誰かにごちそうになるのもありがたいし、
そもそも美味しい食事は誰と食べても美味しい。
経費で食べる「ウマミ」だってある。

とはいえ、日程をすり合わせて、
気兼ねなく行きたい店を自分たちで選んで、予約して、
自腹で食べるのも、当然ながら味わい深いもので。

「今日こんな店、行ったよ」
なにげなく実家の母に近況報告がてらグルメ情報をシェアすると
「あなたたちはいいわね〜」とかえってきた。

「自由に使えるお金があって」
そう吐き出すようにつぶやいた。

いやいや、お母さんだって、私が高校生のときは、
今日は高輪、明日は日本橋…そんな優雅なアフタヌーンティーライフを謳歌していたじゃないか。てかさ、年金だって自分ではほぼ払っていなかったのに、今は毎月15日にきっちりもらって、今日だってお父さんに内緒でデパートでセーター買ってきてるじゃん。

私たちには「旦那の金で平日に3000円のランチを食べる」自由も、
なんとかもらえた原稿料からランチ代を捻出する自由もあった。
でも自由だからって完全に浮かれているわけじゃない。
選択肢があった自由、それゆえの苦しさ、
選ばなくちゃいけないしんどさもあったんだけどな。

 「中学のとき同じクラスだった、あの子どうしてる?」
ランチだけじゃ物足りなくて2件目に入ったカフェ、
答え合わせをするように、そんな話をしたのは母親には内緒。

「お寿司も指輪も自分で買おう」
帰り道、西原理恵子の言葉を思い出す。

そうだ。
今度、あの店、母と二人できてみようかな。

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